「歌と踊りの効用」ミルカ よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
歌と踊りの効用
ここ最近インド映画を観る機会が増えてきた。おかげであの歌とダンスが始まっても驚かなくなったし、始まりそうなときは雰囲気で分かるようになった。
主人公の気持ちが高揚する場面で歌と踊りが始まるのだが、特に若者の恋が芽生えて盛り上がるとこれが効果的になる。
そもそも若者の恋に確かな理由などないわけで、この理由付けに躍起になる映画など見苦しい。若い二人が恋に落ちた事実とその後の展開が重要なのであって、恋に落ちた訳を説明する必要はない。
歌と踊りがいきなり始まることにも特に理由がない。若者たちの恋の始まり、恋の高揚感をスクリーンに表わすのに、リズミカルな音楽と踊りは持ってこいではないだろうか。
主人公ミルカのストイックな人生にも恋の一つや二つはあった。しかし、恋愛は甘酸っぱい思い出ではあっても、積み重ねてきた業績やどうしても癒すことの出来ない心の傷に影響は与えない。むしろ、彼の走ることへの執念のほうが恋をその成就から遠ざけている。
このミルカの人生に花を添える恋を、歌とダンスで盛り上げることはさっぱりとして楽しいものである。こうした表現方法が映画に起伏を生み出し、その人の人生を束の間追体験する人々の気持ちも高揚させるのだ。
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