劇場公開日 2015年1月24日

  • 予告編を見る

「部分部分は楽しめたが、全体的には作りの雑さが目立つ作品。」さよなら歌舞伎町 Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0部分部分は楽しめたが、全体的には作りの雑さが目立つ作品。

2015年1月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

特筆すべきは、卑近だが特殊な世界の住人を演じた役者陣。

話の軸となるラブホ店長の徹を演じる染谷将太。
濁った暗い目をさせたら右に出る者無し。
“染谷将太”の名があるだけで劇場に足を運ぶ価値有り。
今回も安定の染谷節で気怠さと屈折具合を醸し出していました。

また出稼ぎ韓国人を演じるイ・ウヌ。
絶妙な片言日本語を語りつつ、意味の有る裸体演技を熱演。
作中、最も喜怒哀楽の感情の起伏を見せる人物であり。
その自然な不自然さに魅せられました。
余談ですが。
映画「メビウス」で印象的な1人2役を演じた彼女。
何処で感情を爆発させ刃物を持ち豹変するか。
という他作品に引き摺られた間違った期待感がありました。

秘密を抱えるラブホ清掃員を演じる南果歩も良かった。
松重豊との間抜けな遣り取り。
不意にボソッと放つ印象的な一言。
或る時点を過ぎた後の突き抜け振りは最高でした。

ラブホの密室で起きる出来事も良かった。
行為自体よりも行為の前後に起こる、何処か間抜けで哀しく愛おしい遣り取り。
特に良かったのが雨宮サンとの遣り取り。
思い詰めた末にポジティブな方向で突っ走る雨宮サン。
お馴染みの、一種儀礼的な攻防戦を経た後の擬似行為。
擬似行為前後の緩やかな戯けあい。
或る帰結を迎えた後、ガバッと抱きつく姿。
情けなさも含めてグッとくる場面でした。

惜しむらくは作品全体に散見される歪さ、作りの雑さ。
語られる5組の男女の話は部分、部分で楽しめたものの。
要素が多過ぎて終盤の展開への繋がりが見え難い。
明確に本筋と関係ない要素もあり、群像劇の肝である全体がクロスする瞬間のカタルシスが明らかに足りない。
散見されるご都合主義な展開もノイズになりました。

また前田敦子の中途半端な使い方も違和感が。
映画「もらとりあむタマ子」等で既に一定の評価を得ている彼女を“客寄せパンダ”として使っておらず。
刺激的な展開はあるものの肝心の場面を見せない。妙に隠す。
彼女だけが不自然に保護されており周りの女優達と比べて明らかに見劣りしていました。
鑑賞後、印象に残るのはイ・ウヌであり。
前田敦子的にも作品的にも損をした使い方だったと感じました。

部分部分は楽しめたが、全体的には作りの雑さが目立つ本作。

随所に差し込まれる震災とヘイトスピーチの雑な扱いもノイズに。
鑑賞直後は良い作品を見た印象がありましたが、時間が経てば経つほどに違和感が気になり出す。
という意味では長く楽しめる作品かもしれません。

オススメです。

コメントする
Opportunity Cost