「【ロシアとチェチェン共和国との関係性を背景を基にした、劇シブな様々な思惑が入り混じる現代スパイ劇。ラストの遣る瀬無さが尋常でない作品でもある。】」誰よりも狙われた男 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【ロシアとチェチェン共和国との関係性を背景を基にした、劇シブな様々な思惑が入り混じる現代スパイ劇。ラストの遣る瀬無さが尋常でない作品でもある。】
■ドイツの港湾都市・様々な人種が住むハンブルクが舞台。
ドイツの表面的には実在しない諜報機関でテロ対策チームを率いる練達のスパイ、ギュンター・バッハマン(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、密入国したイスラム過激派とみなされた若者・イッサ・カルポフ(グリゴリー・ドブリギン)に目をつける。
バッハマンは彼を利用し、テロリストへの資金支援に関わる“ある大物”を狙おうとしていたが、一方で人道弁護士アナベル・リヒター(レイチェル・マクアダムス)は彼を助けようとし、CIAのマーサ・サリヴァン(ロビン・ライト)は、監視の手を緩めない。
徐々にイッサ・カルポフは、テロ支援の意志などなく、ロシア人の父が残した”汚れた金”を預けられていた銀行家トミー・ブルー(ウィレム・デフォー)を介し、チェチェン共和国の諸施設に寄付しようとすることが分かって来る。
だが、その間に入ったギュンター・バッハマンが目を付けていたアブドゥラ博士(ホマユン・エルシャディ)は、その金を一部、テロに関する船会社に回そうとし、その瞬間を狙っていたギュンター・バッハマンは千載一遇のチャンスと見て動くのだが、それを上回る動きをしたCIAに、まんまとヤラレルのであった。
◆感想
・今作は、多数の秘密組織や人物が錯綜して登場するので、脳内フル回転で見る必要がある。あー疲れた。
だが、慣れれば人物相関図が頭の中に出来上がり、分かり易い作品構成図が出来上がる。今作を面白く観れるかどうかはそこがキーとなる。
・作品自体としては、観る側には優しくない作りであり、一部分かりにくい所もある。だが、今作はそれを上回る様々な伏線や、スリリングな展開に引き込まれるのである。
更に言えば、今作ではラストまでは派手なカーチェイスや、銃撃戦などは一切ない。劇シブなスパイ映画と思ったのはその点である。
<ラスト、自らが考えたシナリオを最後の最後に壊されたギュンター・バッハマンを演じたフィリップ・シーモア・ホフマンの、叫びが何とも言えない苦い余韻を齎す作品である。>