「ブッ飛んだ見た目に反して根はマジメ」映画 暗殺教室 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
ブッ飛んだ見た目に反して根はマジメ
原作未読の場合が多い自分だが、
今回は珍しく原作マンガを知っている状態での鑑賞。
原作者・松井優征氏の前作『魔人探偵脳噛ネウロ』
というマンガがンまぁムチャクチャ面白かったので、
最新作であるこの『暗殺教室』も単行本を購読中。
で、やはり原作を知ってる身だと映画として
ちゃんとレビューできるかどうかが難しいのだが、
なるだけ冷静にレビューしようと努めてみる。
ということでまず最初に書きたいのは、
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なんで烏間先生が中年のオッサンなのさッ!
東欧人教師が何故に韓国人キャストにッ!?
鷹岡先生も自衛官のクセに弱過ぎッ! 油断し過ぎッ!
殺せんせーの「よくぞここまで」のハードル低ッ!!
挙げ句は単行本ではまだ出てない部分のネタバ……
ん? おおぉ、いかん。冷静になるのだ自分。
原作を100%実写化なんて土台無理な話なので、
そこは期待してうまくいった試しはほぼ無いんである。
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はい仕切り直し。
展開は原作の2倍速くらいで進むが、映画版の物語で
必要なキャラクターや情報は一通り説明されるし、
進行の妨げになりそうな要素は省略されている。
少なくとも他の方のレビューを読む限りは
原作を知らなくても問題は無さそうなのかしら。
それに映像面も悪くない。
監督の羽住英一郎は『海猿』シリーズや『ワイルド7』
あと未見だがTVドラマ『ダブルフェイス』『MOZU』
の監督を務めた方。
で、個人的な印象を言うと、この方はハリウッド的な
ケレン味のある映像を作る事に(は)長けている。
本作もハデな画で楽しませてくれるシーンは多い。
原作内の動的なシーン(射撃に関するシーンやら
それをかわす殺せんせーやら)も、
CGにスロー映像にとそつなく使いこなして、
マンガ的な動きをしっかり動画で表現。
原作にはないモンスターホラー風の導入部とか、
鉄塔や大きな管制室内でのクライマックスとか、
ジヨン先生が二挺サブマシンガンを振るう姿とか、
どれもこれもけっこう『画』になってる。
キャスト陣の演技については……特にコメントなし。
良い意味で印象に残る演技をしてた人はいなかった。
強いて言うなら殺せんせーの声を演じた二宮和也かしら。
うまく自分を殺してたと思う。
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一番重要だと思うテーマもしっかり語られる。
『暗殺』と『教育』は一見アンマッチな要素だが、
風貌と行動の9割が冗談みたいな存在の殺せんせーは、
『自分の個性(長所/短所)をよく知り、
仲間の個性と、目標の性質をよく理解し、
目的達成の為にそれらを活かす』
という恐ろしく真っ当な教育を、
『暗殺』という困難な課題を通して生徒達に施す。
そして、落ちこぼれと呼ばれる生徒にも
素晴らしい資質が眠っていることを諭す。
見た目も能力もブッ飛んでいるが、
文字通り命懸けで生徒と向き合い育てようと努める
殺せんせーは、ストレートに良い先生だと思う。
生徒想いの先生と別れるのはつらいもので、
ラストではちょっとウルッときてしまった。
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最初に少し書いたよう、悪役として登場する教師・鷹岡や
加藤清史郎演じるイトナが恐ろしくあっけなく倒されたり
特殊部隊でも倒せない殺せんせーを中学生が追い詰める
という部分にヒネリが足りなく見えたり、
見せ場を盛り上げ切れなかった部分は随所にある。
原作を越えてやろうというチャレンジングな部分もほぼ無い。
だけど、原作の映像化という点ではまずまず忠実だと思うし、
原作未読の方でもわらわら登場する多彩なキャラや
ケレン味たっぷりな映像のお陰で、最後まで楽しんで
観られるのではと思う。
まあ、ハードでシリアスなVFXアクションを期待してる
人にはオススメしないが……さすがにあの殺せんせーの
風貌を観てそれを期待する人はいないかねえ。
以上! ちょっと甘めだが観て損ナシの3.5判定で。
<2015.04.04鑑賞>