映画 暗殺教室 : インタビュー
山田涼介、チャレンジ精神で俳優まい進「想像できないことをやっていく」
1年後に地球の破壊を予告するタコ型の超生物、通称“殺(ころ)せんせー”が、名門進学校「椚ヶ丘(くぬぎがおか)中学校」の落ちこぼれクラス3年E組の担任教師を自ら希望して就任。そして卒業までに殺せんせーを暗殺すること、それが政府から秘密裏に命じられた生徒たちの任務。そんな荒唐無稽な設定が話題を呼び、中高生を中心とした若者たちから絶大的な人気を誇っている松井優征氏のコミック「暗殺教室」。映像化不可能と思われたその原作を、「海猿」シリーズの羽住英一郎監督が実写映画化した。そして、暗殺ミッションの重要な一翼を担う少年・潮田渚役で、アイドルグループ「Hey! Say! JUMP」の山田涼介が映画初主演を務めている。(取材・文/山崎佐保子)
最高速度はマッハ20。月の約7割を破壊し、常に三日月の状態にしてしまった謎の超生物。国家勢力を投じた軍隊が暗殺を試みるも、全て失敗に終わっていた。そんな無敵な“殺せんせー”を、落ちこぼれの生徒たちが暗殺しようと奔走するが、そこには教師と生徒という不思議な絆も芽生えてくる。
原作コミックの大ファンだったという山田だけに、オファーを受けた際は「演じられると思っていなかったので本当にうれしかったです。だけど『僕でいいのか?』という不安も正直あった」といい、「実写化は無理だろうって思っていたので、聞いた時は他の原作ファンの方々と同じリアクションをとったと思う。ここまで見事に映像化できると思っていなかったので、僕自身びっくりしています」と製作プロセスは驚きの連続だった。
何はともあれ、原作ファンが根強い作品に対してのアプローチは難しい。さらに山田自身がファンだったことで、その重圧は倍増した。「僕自身も原作ファンなので、世界観が壊れるのは自分も嫌だし、見ている方にも不快感を与えたくない。プレッシャーはすごかったです。原作のイメージを崩しちゃいけないという重圧もあるし、だけどそこには僕なりの主張も必要だし。その微妙なラインをきちんと見極めるように意識していました」。
中性的な魅力をもつ渚は、控えめな性格でクラスでも目立たない少年。それでいて、暗殺者としての才能を秘めているという複雑な役どころ。「あくまで男の子だから、あまりにも女々しくならないようには注意しました。女々しくてもいいのだけど、度が過ぎないように。また、影を消す脇役というのはわかるけど、影を消す主役ってどんな感じだろう。それをどう追求するかはすごく迷ったところです。どれだけ消して、どれだけ主張すればいいか。考え過ぎて、しっちゃかめっちゃかになってしまったけど、渚を演じる上で何が大切か、それはいかに自然体でいられるかということに途中で気付けたことは大きな進歩だと思いました」と自分なりの答えに行き着いた。
撮影現場ではスーツアクターが殺せんせーを演じていたため、生徒たちと殺せんせーの掛け合いも臨場感たっぷりに仕上がった。「スーツアクターの方がきちんと会話のキャッチボールしてくれたので違和感はなかったですね。その場にいないのは、マッハ20で動く時や触手攻撃くらい」だそうで、「殺せんせーは、先生というよりは親みたいな感覚でした。いつもどこでも見守ってくれているような、アメとムチがしっかりした親。だからこそ僕らは自由に立ち回れた。接しているとすごく好きになるし愛おしくなるので、撮影が終わって殺せんせーに会えなくなるのはすごく寂しかった」と愛着もわいていた。そのおかげか、これまで見下されてきた落ちこぼれの生徒たちが、暗殺対象でありながらも自分たちを気にかけてくれる親のような存在・殺せんせーに、次第に情のようなものを抱き始める心境も難なく理解できたという。
羽住監督から求められたことは、「できる限り忠実に。衣装や髪型など、とにかく世界観を崩したくないという強い思い。監督のカット割りも漫画チックだったり、原作の世界をちゃんとスクリーンに反映させようという強い意志を感じました。僕らはそれにどれだけ応えられるか。僕も漫画を相当読み込んでいたけれど、原作と同じシーンでは『どんな表情してたかな?』って確認作業として見返してみたり。みんなで息を合わせて頑張りましたね」と和気あいあいながらも、スタッフ・キャストが一丸となって原作の世界観を構築していった。
山田はもちろん、共演の菅田将暉、加藤清史郎、橋本環奈らも原作コミックの愛読者。斬新でユーモラスな設定の裏に、現代の教育や教師像への批判ともとれるシリアスなテーマもはらんでいることが、若者からの絶大な支持につながっていると考えられる。山田も、「実際にありそうでありえない設定ですよね。そのギリギリのラインがすごく楽しい。漫画を読み進めているとすごく考えさせられる場面に遭遇するし、ひとりひとりのキャラクターもちゃんと濃く描かれている。僕が言うのもおかしいけれど、芯がある作品だなって思った。殺せんせーの発する言葉一つ一つにも重みがあって、今の現代の若者たちにも通じる言葉が選ばれているなって思いました」。
当初は実写化不可能と思われた世界観も、あっと驚く完成度で具現化させた。トップアイドルとして、「Hey! Say! JUMP」の一員として、一俳優として、山田は挑戦を続けていく覚悟だという。「非現実なものを現実にする。やりたくてもやれる人は一握り。託されたからにはちゃんとやらないといけないし、どこまでやってやろうかというチャレンジ精神もある。また教科書通りにやりながらも、どこかで裏切ってやろうという気持ちもある。ショーやコンサートでも、いかに自分たちの力を見てもらえるかにピントを合わせて色々な案を出しているんです。想像できないことをやっていく、それはジャニー(喜多川)さんの強い意志だと思う。僕たちの活動は、そういうところにもつながっていくんじゃないかと思います」。早くも続編への期待が高まっているが、「僕もそうだし、監督もやる気十分って感じです。まだまだやれることは存分にあります!」と力強くうなずいた。