「ハル・ベリー&ハル・ベリー」フランキー&アリス 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ハル・ベリー&ハル・ベリー
『チョコレート』でオスカーを受賞したかと思えば、『キャットウーマン』ではラジー賞を受賞。ヒット・シリーズに出たり、B級チックな作品に出たり。
凄いんだか微妙なんだか分からない活躍続くハル・ベリーだが、本作は間違いなく『チョコレート』以来の名演!
簡単に言ってしまえば多重人格者の話。
ストリッパーの黒人女性、フランキー。
そして、別の人格というのが…
アリスという名の女性で、白人の人種差別主義者。
全くの両極端というか正反対の性格が自分の精神の中に潜む。
しかも、実話だと言うから尚驚き。
バーで出会った黒人男性と一夜を共にしようとした時、白人の人格が現れ、相手を罵倒。
白人の人格のまま、昔揉めた白人女性の結婚式に出席。
“フランキー”には自覚は無い。
彼女自身の苦悩は勿論、翻弄される周囲も心痛。
“フランキー”と“アリス”の人格の他に、もう一人、幼い少女の人格が。
協力的な“天才”の少女の話を足掛かりに、担当医師は、多重人格となった彼女の心のトラウマに迫っていく…。
とにかくハル・ベリーの演技に圧倒される。
ラフな主人格のフランキー、トゲトゲしいアリス、幼い少女、声色も振る舞いも変え…。
三つの人格が次々と入れ替わるラストの診療シーンは圧巻。
演じ分けだけではなく、内面の苦悩や葛藤も体現。
ハル・ベリーも本来は高い実力派である事を再認識させられた。後、美貌も。
担当医師ステラン・スカルスガルドもユーモラスを含め好助演。
原因となったトラウマ。
フラッシュバックのように挿入される過去の記憶は気になるし、悲しいものではあるが…、何かこう、胸に突き刺さるような痛々しさや深みには欠けた。
実話だからそのトラウマにケチは付けられない。あくまで、演出や脚本など作りの問題。
作品的にはもうひと押し欲しかった気もするが、自分の中の別人格との向き合い方、何よりハル・ベリーの熱演だけでも一見の価値あり。