「ごちそうさまでした」マダム・マロリーと魔法のスパイス odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
ごちそうさまでした
クリックして本文を読む
インドからの移民、若い料理人のハッサンが持ち前の味覚神経を活かしてミシュランのスターシェフにまで成長する物語。味覚が鋭いと言われても映画では味わうことができません、そこでハッサンが天才シェフであることを観客に伝えるための冒頭のエピソードが印象的です。
子供の頃、市場で生ウニを食べてうっとりする描写、母親の料理哲学が深い、「命を奪った生き物の幽霊をつくるのが料理、食材には全て魂があるの、だから料理は魂の味がする、それが分かる?」と教えられ味の深さを学んだハッサンでした。
出国審査で何故英国を出るのかと聞かれハッサンが「英国の野菜には魂も命も無い」と言い放ちますが何故かお役人はもっともだと言わんばかりに「分かった」とスタンプを押してくれます、英国人の自虐ネタでしょう。新奇性を競うあまり液体窒素やエスプーマを使う分子ガストロノミーに対しても「これが料理?魂の味は何処へ」といった主人公の心情が伝わります。再出発の夜に皆に用意した料理が生ウニというのも伏線回収なのでしょう。
タイトルのマダム・マロリーは意地悪ばあさんの様でいながら実はリベラリスト、ハッサンの才能を見抜き、まるで第二の母のように背中を押してくれる役どころなのだが流石ヘレン・ミレンさん、いい味出してくださいました。
料理はもとより映像美も素晴らしい、ピレネー地方の田舎町の風情、朝市に並ぶ食材の水々しさ、小川の畔、古い町並み、パリの夜景、峡谷を走る列車など眼に残ります。音楽もインド風、シャンソンとバラェティ豊か、味は無理ですが見どころ、聴きどころたっぷり、お腹いっぱいになった気がします、ごちそうさまでした。
コメントする