「食べて幸せな気持ちになれる料理こそ魔法」マダム・マロリーと魔法のスパイス 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
食べて幸せな気持ちになれる料理こそ魔法
製作スティーヴン・スピルバーグ、監督ラッセ・ハルストレム、主演ヘレン・ミレン、オスカー級の豪華組み合わせ。
かと言って、オスカー級の敷居の高い人間ドラマではない。
かと言って、この邦題からディズニー映画のようなファンタジーを彷彿させるが、それでもない。
庶民の口に合うような、ハートフルな人間ドラマ。
インドのムンバイでレストランを開いていたカダム一家だったが、暴動により店と母を失う。
ヨーロッパに移住し、山間部ののどかな町で車の故障により足止めを食らう。
そこのレストラン跡地を気に入り、インド料理レストランを開こうとする。
メインディッシュは、インド人ファミリーが失意を乗り越え、レストランを開くハートフルな再起ストーリー。
そこに、各種スパイス。
すぐ向かい側には、高級フレンチ・レストランが。
そこのオーナーのマダム・マロリーは、騒がしいインド料理レストランや匂いが我慢ならない。
と言うか、あからさまに異国の料理を見下す上から目線。
さらに、材料が買い漁ったりと妨害も。
最初はイヤミなマダム。
カダム一家のパパも負けてられない!
やられたら、同じ方法でやり返したり。
お互い頑固。
ことごとく対立。
一流フランス料理vs庶民的なインド料理!
カダム一家のインド料理レストランがいよいよオープンするが…
客が一人も来ない。
やはりフランス人にはフランス料理で、インド料理なんてゲテモノ…?
ならば、インドでのやり方で。
民族衣装に着替え、客を呼び込む。
次第に繁盛し始める。
そうなってくると、対立がさらに激化。
マダムもパパも、もはや料理より意地の張り合い。
料理とは言え、国と国の対立。
差別・偏見がある事件を起こす。
フレンチ・レストランのシェフがインド・レストランに放火する暴挙を犯す。
勿論マダムはこの不届き者を解雇、対立は皮肉にも終息。
が、カダム一家の次男が火傷を負う。
マダムはインド・レストランの落書きを消すなど、考えを改める。
マダムの頑な心を開いたのは別にあった。
それは、カダム一家の次男ハッサンの料理を一口食べて。
実はハッサンは、天才的な料理人の腕の持ち主。
ハッサンの才能をこのまま留まらせておくには勿体ない。
マダムはハッサンを超一流の料理人として飛躍させようとするが…。
異国の者同士の交流。
夫の死後、一人でレストランを切り盛りし、自分にも他人にも厳しかったマダムが心を開く。
ハッサンのサクセス・ストーリー。
ハッサンと家族。パパは息子の独立に反対。
ハッサンとマダムのレストランの美人副シェフのロマンス。
いがみ合ってたマダムとパパも…。
ヘレン・ミレンはさすがの存在感だが、何よりインド人キャストの好演がいい。
美しいフランス山間部の風景、そしてそして何と言っても、美味しそうな料理の数々!
個人的には、カダム一家のインド料理の方を食べてみたいかな。
独立し、才能を発揮、TVでも取り上げられるほどの料理人となったハッサン。
オチはちと予定調和だが、安心して味わえる。
要素はふんだんのフルコースながら、味は誰の口にも合う。
ご堪能あれ!