劇場公開日 2014年11月1日

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「魂が求める味への距離」マダム・マロリーと魔法のスパイス とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0魂が求める味への距離

2018年10月27日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

楽しい

単純

幸せ

いろいろなメッセージが詰まった映画。
特に、原題の意味するテーマを大切に見たい映画。
なので、単純にハッサンの成功物語だとは思えない。

ハッサンとマルグリットの関係性の変化。
 さわやかなんだけれど、同時に同じ職であるならば、相手との才能の差を見せつけられてしまう残酷さ。二人はどう乗り越えるのだろう。

マダムとパパの関係性の変化。
 ちょっとネタバレになってしまうが、大人の恋の仕方のお手本になりそうなほどうっとりする。

 正直、ハッサンがいなくなった後、このレストランが、それまでの評価を保とうと工夫したのかの方が、興味あるかな。

でも、それをあのような形で帰結する、そして最初のハッサンの母の言葉や、パパが野菜に点数をつける基準なんかを考え合わせると、ミシュランの☆取りの話でもありながら、ミシュラン批判にもなっている。
(ミシュランは”味”だけで評価が決まるのではない。二つ★は近くに行ったら立ち寄るべき店、三ツ★はその店を訪れるために旅行する価値のある店じゃなかったっけ?そして接客も評価の対象になっているから日本には三ツ★が多いって聞いたような。)

そして、何より移民の問題。
 実際はもっと複雑。料理にとっては匂いも味の一つ。中国料理のお焦げに至っては”音”まで味の一つ。繊細な香り(トリュフ等)を楽しむ料理を味わっているところに、インド料理の香りが漂ってきたら。静かに料理を楽しみたい日に、隣の大音量の”音”が聞こえてきたら。実際問題として他の店を予約する。だから、マダムや最初のシェフがいらいらするのもわかる。
 そんな、一つ一つは些細なことだけれど、現実的には折り合いがむずかしい問題が山積み。
 でも、そんな問題をディズニーらしくまとめたなと思う。
 小気味よい下ごしらえをする包丁の音ともに、なんともコメディタッチのいがみ合い。反転して後半は心地よい、音楽に包まれる。

そんな素敵な要素がいっぱいの映画なのだが、
 途中のシェフの起こした事件はチンピラみたいだし、警察が介入しないのも変。
 手にあれだけの火がついたら、最低でも野口英世氏状態になって、かなりの手術やリハビリが必要。場合によっては二度と料理ができなくなるだろうに、まるで”魔法”にかかったように、回復するのって変。
 そして、転機になるオムレツも、あの状態で合格って…。
エピソードが現実から乖離しちゃって、白ける。

役者の演技だけでも語り尽くしたいほど良いし、
映像にも酔える。
音楽・音の使い方も素晴らしい。
でも、”感動”までには至らない。
惜しい。

とみいじょん