「脚本と演出が残念至極」エヴェレスト 神々の山嶺(いただき) 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)
脚本と演出が残念至極
原作を読んでない人には、どう伝わったんだろうか。
羽生(阿部寛)は、何のためにどうやってネパールに居残っていたのか。
羽生はなぜ深町(岡田准一)の同行を許したのか。
岸涼子(尾野真千子)と深町は、なぜ親しくなったのか。
最後、深町は何のためにどのルートをたどってどこまで行こうとして、実際にどこまで行ったのか。
そして深町は何がしたかったのか。
たぶん全然分からないのではなかろうか。
話を短くしないといけないのは当然。
だが、やり方が下手くそすぎる。
もっと前半の人間ドラマを丁寧に描かなきゃダメでしょ。
(逆に後半は、「苦悩」の演出が無駄にくどい。
とくに原作を変えたところ、原作にない場面を付け足したところが酷い)
説明的台詞のオンパレードで一生懸命説明しようとしてたけど、
表面だけつまんでつなげただけじゃ何の深さもない。
その反面、肝心なところが説明されない。
たとえば、入山には政府の許可が必要なのに
それはどうするのかとか。
南西壁冬期単独無酸素というのが、
どれだけ無茶なのかとか。
おまけに同じようなカットが何度も使われていて、
「せっかく標高5300mのベースキャンプでロケしたんだから
その映像たくさん使わなきゃもったいない」
みたいなスケベ根性が見え隠れ。
リアリティについても、雑さ、あるいは手抜きが見える。
たとえば深町が
ベースキャンプに1人で入っていつ来るか分からない羽生を待つのに、
あの小さなザックじゃ1泊2日がせいぜいでしょ。
CGは使ってないみたいだけど、VFXはちゃんと使ってて、
まあいいんだけど、出来がちゃちくて臨場感が足りないし。
配給はアスミック・エースと東宝だけど、
実はこれもまた、
「セーラー服…」と同じくエグゼクティブプロデューサー:井上某の
角川映画40周年記念作品なんだよね……
残念至極。