「力を抜いて。」きみはいい子 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
力を抜いて。
親から虐待されて育った子供は、親と同じように虐待に走ると
云われているが、どこかで大きく環境が変わり愛情を受けると
その心地良さを、我が子や他人に与えられるようになるという。
今作では池脇千鶴と尾野真知子が過去を背負った母親を演じて
いるが、甘えられぬ世界で生きてきた人間が心を許せる存在に
出逢った時の安心感が「抱きしめる」というカタチで表現される。
最近ニュースで気になるのは、やたら学校や教師を責め立てる
記事の類が多すぎることだ。今作で新米教師を演じる高良君が
生徒にバカにされ、保護者に文句を言われ、同僚や先輩からも
蔑まれる中で生徒をどう守り、どう心を拓かせるかに苦悩する
姿は心に残る。その指導が巧くいかない、道理に叶わないこと
も多々あるが、それは社会人が就職してから味わう洗礼や屈辱
と大して違わない。でも職業が「子供を守る」はずの教師でしょ、
の立場でクローズアップされて転嫁されているとしか思えない。
本来子供は皆で守るものである。家族も隣近所も知人も友人も
皆で協力してその子の動向を見守ってやることが一番の方法だ。
無理だと決めつけてやれることをやらないうちに手遅れになる。
知的障害を持つ少年が認知症の老女に助けられるエピソードで
いつも周囲に頭を下げてばかりの母親が、この子はいい子だと
老女から褒められるシーンがある。つい昔の子育てを思い出し
涙が溢れてしまった。息子が乱暴で言う事を聞かなかった時期、
自分の子育てが間違っているのだろうかと悩んだことがあった。
「この子はいい子になるからゼンゼン大丈夫。お母さんそんなに
悩まなくて大丈夫だよ」と、ポーンと肩を叩いてくれた人がいた。
この人は神様か?と思って急に力が抜けたのを今も覚えている。
子育てはいつだって大変だ。愚痴を言い合って、分かち合って、
お互いを褒め合って乗り切るのも一つの方法。親も先生も人間。
(親の方が神経質になり過ぎているのかな。完璧なんてムリだよ)