岸辺の旅のレビュー・感想・評価
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最初ちょっと戸惑った
新聞配達屋さんのおじいちゃんの話に胸が痛くなった。
あの滝に深津さんが飛び込むんじゃないかってビクビクしたことと、お父さんが出てくるシーン、蒼井優の嫌な感じとか凄く伝わってきて幸せって難しいと思いました。
ユウスケ先生の、波と点の話?あの世とこの世の話、なるほどなーって。
毎日を後悔せずに生きてる人って、どれだけ居るんだろうかと。
私も毎日を後悔せず生きたい気持ちになりました。
「岸辺の旅」を観て・・
3年前に自殺した夫が戻って自宅に来るというファンタジー。夫婦二人で夫が生前暮らした場所を巡るというストーリー。同名小説があるらしい・・浅野忠信と深津絵里の夫婦コンビ。カンヌ映画祭で監督賞を授賞。
まさかこんな話だとは。
レビューを見る限りでは予告編を冗長にしただけという意見が散見されておりましたが、個人的にはそんな印象は皆無です。寧ろ180度逆転させられました。
予告編の印象だと、死んだ夫と別れの為の旅をする、そんな悲しくて陰鬱な旅路の話だろうと。ですから私は泣きに劇場に足を運んた訳ですが、正直驚きました。まさかこんなに前向きな作品だったなんて。
思い切りネタバレから入りますが、これは
「夫との離別を悲しむ話」ではなく、「死、離別を乗り越えて夫との愛を再認識する話」なんです。一見暗いようでものすごく明るい話だったんです。
見終わったあとの爽快感はすばらしいものがありました。
ただ、惜しむらくは恐らく原作が相当長いのでしょう。一言一言の含蓄が深すぎる。聞き逃すとその場面の主題が掴めなくなる。結局私も本編を見ている間は本映画の主題を捉えそこね続け、見終わったあとは漠然と疑問を持つのみだった訳なのですが、その後一つ一つの場面を思い返してメモとペンを片手に分析していくと漸く先述した主題が掴めました。一つの難解な国語の文章題を解ききった様な爽快感があり、その後じわりとこの幸福な物語が脳髄に充満しました。何が言いたいかといえば、話自体、主題自体は大変素晴らしいものであるが、その理解はかなり難易度が高いということです。
私は映画を頻繁に見るわけではないので、映画好きな方なら違う見方を出来るのかもしれませんが、正直茫漠とした視点で見ているだけでは浮気のイザコザシーンぐらいしか解釈が叶いませんでした。あのシーンだけは象徴表現も少なく、かつ単純な二項対立なので至極わかりやすいのです。
その難解さを愛せるなら、本映画は十全にお薦め出来る最高の作品です。
難解故に「もう一度見たい」と思わせる映画でもありますから。
幽霊さえ消えてしまったら空虚しか残らない
鑑賞直後は印象イマイチだったのだが、レビューを書くに当たって
色々と考える内に、段々と好きになってきた作品。
……とはいえ、最初に不満点から書いてしまおうと思う。
監督の前作『リアル 完全なる首長竜の日』でも感じたが、ラブストーリー的要素が入ったり、
露骨な感情表現が入ったりする場面では、途端に陳腐な印象を受けた。
終盤の授業からラブシーンまでの流れとか、最後に出逢う幽霊の最後とか、
示唆的なシーンの多い本作において、これらの場面はカメラワークや台詞が直接的過ぎる気がする。
あとね、あの物理学の授業が、老若男女を惹き付けるほどの面白い内容には聴こえない(苦笑)。
いや単なるイチャモンではなくて、最初の授業シーンはシュールな笑いが感じられて良いけど、
2度目は妻への想いを語る肝心なシーンなので、そこでの説得力が欠けるのは痛い。
この作品、中盤までは凄く好きなのだが、特に終盤になってから上記
のようなシーンが頻出するので、鑑賞後の印象がイマイチだったのかも。
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不満点は以上。ここからは気に入ってる点を。
まずこの映画、幽霊と生者との距離がやけに近い点がユニーク。
主人公の優介は幽霊なのに、フツーに飲み食いするし他人と話す事だって出来る。
妻(瑞希)も妻で、夫から溺死したと聞かされても、あまり悲しんだ様子もなく
「水でっていう気はしてた」なんて素っ頓狂なことを言ったりする。
なんだ、この随所で感じるオフビートなユーモアは(笑)
と思いきや、つうっと背筋が冷たくなるような不気味さもある。
食事の話題だけが聴こえない老人、優介を見つめる子ども、画面外を見つめたまま動かない未亡人……。
その人物が何を考えているのか分からない、得体の知れない怖さを感じるシーンがある。
奇妙なユーモア、微かな不気味さ、夢のように断続的な語り口、
これらが入り雑じって、本作の何とも言えない“味”になっている。
そして、心を動かされるような哀しく優しいシーンも数多い。
ここからはこの奇妙な物語について自分なりに推察してみる。
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誰が言ったかは知らないが、こんな言葉を時折耳にする。
「人間は2度死ぬ。一度目は肉体が滅んだ時、二度目は人から忘れられた時だ」
幽霊らしさの薄い幽霊と旅する瑞希を見ながらふと思ったのは、
上の言葉にもうひとつ死のタイミングを加えるなら、
それは『人から思い出された時』かもしれない、ということ。
「死んだ」と聞かされただけでは大抵、「死んだ」という認識までには至らないものだ。
もしも親しい人が死んだと聞いても、しばらくはその辺に「いる」気がする。
「あの人はちょっと出掛けているだけで、またひょっこり戻ってくるんじゃないか」
なんてことを、ぼんやりと考えている。
だけど、親しい人を亡くして初めて気付く事ってけっこう多い。
あの人はこんな人たちと交友があったのか、
あの人はこんな意外な一面もあったのか、
あの人はこんな想いを抱えて生きていたのか、
あの人はこんな風に自分を想ってくれていたのか、
あの人は自分にとって、こんなに大切な人だったのか。
そこに思い至ってようやく、
「あの人はもうこの世から消えて失くなってしまった」
という事実の重さに愕然とし、打ちのめされる。
人が本当の意味で死ぬのはそんな瞬間だと思う。
心の中でその人が占めていたはずの部分が、
風がごうと吹き抜けるような大きな大きな空洞に
なってしまったのに気付いた瞬間だと思う。
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この映画の幽霊は、
幽霊と接する人の、「あの人はまだその辺りにいる気がする」という想い、
もしくはその人の死を受け入れることを拒絶している心の表れなのかもしれない。
また幽霊にとっては、「死んだ後も忘れないでほしい」という願いなのかもしれない。
新聞屋の老人が微笑み交じりに語った言葉を思い出す。
「僕はきっと、何のつながりもなくなるのが怖かったんです」
物語に登場する幽霊たち。
切り抜きの花を集め続けた老人は、主人公たちと心の繋がりを感じた夜に消えた。
ただの見ず知らずの老人ではなく、喪失を覚えるに足るだけの親しみを与えて消えた。
ピアノを弾けずに死んだ少女は、好きなピアノを好きなだけ弾いて消えた。
少女の姉が長年心に秘めていた後悔が晴れることで消えた。
ぼろぼろになるまで妻を連れ回した男は、「死にたくなかっただけ」と呟いて消えた。
彼は、妻が自分の死を認めてしまうことが怖かったのか?
それとも妻の方が、彼の死を認めるのを恐れていたのか?
そして、岸辺で消えた優介。
優介が消えたのは、そして瑞希が涙を流すのはきっと、
彼女が愛する人の消失をようやく受け入れたからだ。
幽霊さえ消えてしまったらそこには空虚しか残らない。
だけど、その空虚を埋めたいと願うことで初めて、人は再び前に進めるようになるのだろうか。
少なくとも優介の幽霊は、自身の死を足枷にしたまま瑞希に生きてほしくなかったのだと思う。
<2015.10.03鑑賞>.
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余談:
蒼井優、幽霊より怖い(笑)。
いちばん怖いのは。
第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞。
さぞや劇場は混んでいるだろうと思えばやっぱりの満席^^;
観方によって好き嫌いの分かれるある意味ホラー的展開に
これが?と思った人も多かったようで、鑑賞後の中高年の
会話が廊下で乱立していた。私的に黒沢清の作品だからと
ある程度覚悟していたので戸惑いはなかったけれど、多分
幽霊が目の前に登場しても平然としていられる人は、その
人自身が死に寄り添い近づいているのだと思う。夫が失踪し
すでに3年が経つのに未だ喪失感と覇気のない雰囲気を醸す
主人公を演じる深津絵里が、突然現れた幽霊の夫をアッサリ
受け容れることからも感じられる。もう待っていたかのよう。
それに対し夫は自身の病を苦の失踪→死を説明し、妻を旅に
誘い出す。目的は何なのよ?と思いながら夫婦と一緒に旅を
する観客は道中で出逢う不思議な人々&出来事に動揺を覚え、
あっけなく境界へと辿り着く。メロドラマとファンタジーが
入り混じった映像と音楽もさることながら、狙い澄まされた
監督の死生観に慄くのだったが、しかし何よりも怖いのは
生前に繰り返された(らしい)浮気がバレて、妻と愛人が対峙
する病院での面会場面。幽霊よりも愛憎が勝るホラーの一幕。
(小松政夫演じる配達員が不気味で優しくて哀しかったわぁ)
久々の途中退席。
「岸辺」ってつまり彼岸と此岸(あの世とこの世)の境目なんでしょう?死んだ夫がまだ未練の残る妻を連れて、自身の生前ゆかりのあった土地を案内し、そこの人々と会い、かつての夫の人となりを知る。まあ、スジはわかりますよ。だけど、皆さんのレビューの通りでした。極力期待をかけずに行ったのに、それでも、なんだこれ!?とがっかりしてしまいました。いたるところで、設定に無理無茶が多くて、どっちつかず。セリフも陳腐。「先生」と呼ばれて久々の講義をしたところで、そんな宇宙の話、田舎の爺さんやガキがそんなに食いつく話かよ!っていい加減頭にきて、カオルと死んだ旦那の猿芝居を見せられてもう我慢が出来ず、僕は怒って出て行っちゃいました。昼間せっかく時間をとって観に行ったのに。一日1上映の理由がわかったような気がした。
あわい
黒沢監督前作『リアル』は、夢と覚めている時の境目が溶けていたが、本作は、生者と死者のあわいを溶かす。
「実は死んでいる」人が出てくる映画はシックスセンスほか結構多く、目新しいものではないけれど。
主人公二人が歩く田園がまるで天国のように穏やかで、ああこれは全員死んでいる人の話なんじゃね?と途中思ったが、そうでもなく。
私はてっきり柄本明や村岡希美も「死んでいる人」なのかとも思ったが、そうでもなく。
誰が死んでて生きているのか?はっきり分かるようで実は分からない。
いや、どう解釈するのが正解か?という類いの映画ではなく、その境目が溶けていくところが面白い。
バイクをかっ飛ばす小松政夫(死者設定・非現実)のシーンは日常的なよくある田舎の風景で、小松が死者だとわかるシーン(現実)はセットで作り物めいている。リアルと非リアルの逆転。
生きている筈の蒼井優が生き霊っぽいというか一番ホラータッチで撮られているのも可笑しくて面白い。生者と死者の逆転。
「はい、ここ怖がる所ですよ!」的な分かり易い怖さは無いけれど。
何気ない夕暮れの公園や、夜の商店街のシーン。言葉では説明できないけれど、何かがちょっと不穏な感じ。果たしてこの世なのか、あの世なのか。現実とも夢ともつかない、絶妙なホラー具合。静かな、そして繊細な映像の差異。
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生きていようが死んでいようが、「消せぬ思い」というのはあるもので。
「消せぬ思い」は愛なのか執着なのか?そのあわいも贖罪とともに溶けていく。
「消せぬ思い」を核としたド直球のラブストーリーだったなあと思う。
前作同様に、誰かを「赦すチャンス」と、誰かから「赦されるチャンス」を描いた映画なのかなあとも思った。普段の生活ではそういうのって中々難しくって、わだかまりが溶けないままのことも多い。だからこそ心に染みる映画だった。
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追記
浅野さん小松さんの「フラがある感じ」は幽霊だからなのか、なんなのか。おかしみもあって良かった。
追記2
肉体の実存を生業としている首藤さんが一番肉体感がなく幽霊っぽいところも良かった。首藤さんが演じた幽霊には成仏してほしいなあ。
追記3
最近、葬式があった身としては、不思議と励まされる映画だった。黒沢清に励まされる日が来るとはビックリだ。
どうしても黒沢ワールドが好きくなれない。
どうしても黒沢ワールドが好きくなれない。分かる奴だけ分ればよい作品を製作する映画監督は、大っ嫌いです!!「トウキョウソナタ」もよく分からんかったが、今回の作品もいまひとつ。まさか黒沢流の死生観を描いた作品でもあるまいし。瑞希が、すりゴマの白玉を作っている最中に優介が現れる。優介の現れ方は、このタイミングで良かったのだろうか?もっと違う手法はなかったのだろうか。この映画は、難解で私には難しすぎたのだろうか?評論家うけする作品だったのだろうか?個人的には、幽霊を出してくるのは、ご都合主義の映画と、つい評価してしまう。女優 深津絵里を出演させる意味もよく分からない。優介のアインシュタインの話も????。光も粒もゼロであり、この世界は、「全てが無である??????」ただの歯科医の優介にそんなことを言われても…。
意表を突かれたな
こういう話だとは思っていなかったので、意表を突かれ煙に巻かれた感がある。 夫は成仏前の霊のようだが、夢だったかのような描写もあり、すべてが虚構なのか、どこまでが現実なのか分かりにくい。最初~白玉団子、喧嘩別れ~白玉団子の所が現実で後は夢というより妄想か、に見えた。でないと、夫登場時から驚きもせず、正体を知っていたりした理由が説明できない。
まあ、新聞屋は眠ったまま、ピアノ少女は微笑みながら、アホ旦那は苦しみながら、夫はスパッと消えるという4人の成仏の様子が興味深い。
キャストは全く問題ないが話の構成が納得行かなかったことが残念。
うーん‥
キャストはものすごく良かったけど、ストーリーに感情移入できず‥
死んでるのに、食べる?誰とも話す?セックスできる?それでいなくなったら跡形もなし?なんか‥って感じだった。
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