「フォルカー・シュレンドルフ監督の遺言のような作品。」シャトーブリアンからの手紙 さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
フォルカー・シュレンドルフ監督の遺言のような作品。
ブリキの太鼓のフォルカー・シュレンドルフ監督作品ですよ。
ブリキの太鼓でも、ナチスをグロテスクに諷刺していましたよね。そういうとこ、ドイツは凄いと思う。
本作は第二次世界大戦時のナチ占領下のフランスで、150人のフランス人が銃殺された史実を元にしています。
発端はナチの1人の将校が暗殺されたことなんですが、ヒットラーは17歳の少年を含む150人を殺せと命令します。
彼等が殺されるまでの4日の出来事を、17歳の少年目線で描いています。
フランスではこの他にも、「サラの鍵」に出てくるるヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件(1万3152人)などがありますが、あまり知られていないように思います。
シャトー・ブリアンというのは地名で、そこの収容所がありました。
17歳の少年が最後に家族に当てた手紙が、タイトルになっています。
淡々としてます。でも確かに迫ってくる死の恐怖を、背中に感じる。
まるで自分が死を待つような心境になって、震えました。
当時フランス政府は存続していましたが、ヒットラーが17歳の少年を殺すのさえ止められなかった。
シュレンドルフ監督は、17歳の少年に訪れる死を誤魔化しません。
無力とはこういうこと。静かに語りかけてきます。
ラスト。死に行く老人が砂に埋もれた自身の義足を脱ぎ捨てるところが、心の解放を自由を求めるメタファーのように思えました。
同時にドイツ兵達の葛藤も描かれています。命令に従うのか?良心に従うのか?
理不尽な銃殺に耐えられず嘔吐するドイツ兵(可愛い顔をしてたので調べたところ)は、後のノーベル賞作家ハインリヒ・ベルがモデルのようです。ヒットラー青年団に入るのを拒み、その後もずっと反体制を貫いた人です。
フォルカー・シュレンドルフ監督は現在76歳。
残りの人生を何に捧げようと思っているのか、よく分かる作品でした。