愛を積むひとのレビュー・感想・評価
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先いく者残される者
いいお話なんだけど、
樋口可南子と佐藤浩一の夫婦はいいし、せっかく移住して来たのに、片方が残されるという最悪のパターンながら、残された夫がめげずに頑張るというのもいい。
よくオーストラリアや東南アジアに夫婦二人で余生を過ごそうと日本のモノを処分して行ったのにしばらくしてひとりぼっちになって破綻してしまうケースがあるらしい。
本作は、夫婦二人の生活に園芸家のわけありバイトやその彼女その親が絡んで、なかなか騒がしく一人でおいといてくれない。
妻の希望した洋風の塀の石を一つ一つ積む作業でバイトの透や紗英の父とも心を通わせていく。
また、理由は明確にされていないが確執のある娘とのわだかまりも描かれている。娘が連れ子のある男と一緒になりたいと言ったら、お前の人生だ、と返せるなら、なぜ娘は出て行ったんだ、と思ってしまう。
紗英の両親役に柄本明と吉田羊の組み合わせには驚いた。
東京で夫婦が過ごし手放した町工場の跡地が、コインパーキングに変わっているのを見たと言う篤史の顔は暗かった。が、それだけ。
塀の石を積むって弱くない?続きであっても塀と小屋ぐらい作ってしかった。
娘がスカーフで隠していたネックレスをジャーンと披露したのには仰々しさを感じた。
夫婦愛
佐藤浩市と樋口可南子が夫婦役を演じておりなんて素敵な夫婦だろうと思った。仕事一筋だった篤ちゃんが北海道に越してきて暇を持て余しているのをみて石を積むことを提案。
自身は心臓病が悪化していく事を伏せとうとう亡くなってしまう。
妻が夫に宛てた手紙は泣かずにはいられなかった。
石塀の一つ一つ、大きな石いびつな石にも役目があるというくだりは良かった。
素敵な夫婦でした。
古い土台が、その上に積まれる新しい石を支えるように
映画「愛を積むひと」(朝原雄三監督)から。
予告編を何度も見てしまったので、物語はほぼ予想どおり。(汗)
だから「愛を積む人ひと」の意味が知りたくて、メモをした。
最初に引っかかったのは、主役の佐藤浩市さんの台詞。
「この塀を作り始めてから、つくづく思うことがあるんだ。
でかく形のいい石ばかりで塀が出来上がっているわけじゃない。
小さく割れた石とか、おかしな形のいびつな石とか、
そういう奴らにもな、塀を支えるのに、必ず役に立つ場所がある。
たぶん、俺にも、お前にもだ」と、若者に諭すシーン。
しかし、答えはラストに待っていた。
樋口可南子さん演ずる妻が、死の直前につづった夫への手紙の一節。
「古い土台が、その上に積まれる新しい石を支えるように、
私たちが毎日を一所懸命生きることが、世の中を変え、
次の世代の生きる支えになる。だから、篤ちゃんには、
一人になっても、最後まで石を積み続けて欲しいの」
自分のためではなく、次の世代の人たちのために、
私たちは、コツコツとその土台を積み上げていく作業をする。
「愛を積む」って、そういうことなんだな、とメモをした。
P.S.
北川景子さん演ずる、ひとり娘の名前が、聡子(さとこ)。
父親役の佐藤浩市さん、略すと「さとこ」。まさかねぇ。(笑)
妻への愛の数だけ、周囲との絆の数だけ、石を積む
アメリカ人作家の小説を、舞台を北海道に置き換えて映画化。
違和感ないくらいの“THE日本映画”に仕上がっている。
東京の町工場をたたみ、北海道美瑛に引っ越して来た篤史と良子。妻の望みである石塀を作りながら夫婦二人第二の人生をスタートさせ始めた時、良子が急逝。悲しみに沈む篤史は、良子からの手紙を見つける…。
とにかくデキた女房。
石塀作りも暇を持て余す夫の事を考えて。自分の死後の夫を思い手紙を。
夫は不器用で無愛想だが、根は広く優しい事を知っている。
人生の苦楽を共にしてきたからこそ、お互いを思い合い、分かり合える。
こんな夫婦になりたい…と、誰もが思わずにいられない。
良く言えば憧れ、悪く言えばファンタジー、単なる夫婦愛の物語だけだったら退屈してしまう所だが、妻亡き後の夫が周囲の人々と交流を深める様がミソとなっている。
石塀作りを手伝う造園会社見習いの青年・徹。
無愛想で恋人・紗英にしか心を開かず、篤史と似ているものがある。
ある時、紗英の妊娠が発覚するも、紗英の両親が猛反対、強引に引き離そうとする。
自分に自信が持てない徹を後押しし、男としてけじめをつける決心をした彼を傍らで見守る…。
篤史と良子の一人娘、聡子。
ある出来事をきっかけに、父娘はわだかまりを抱えたまま疎遠。
北海道で一人暮らす父を心配する娘、東京で一人暮らす娘が内心気になる父。
本当は思い合っているのに、素直になれない。
父娘の関係の修復は…。
若者の恋。
親子ほど年が離れた若者との交流、娘との関係。
いずれも困った時に、それを見越したかのように、妻からの第2、第3の手紙が導く…。
佐藤浩市&樋口可南子がさすがの名演。
若いカップル、野村周平&杉咲花がフレッシュな魅力。
紗英の義理の父親役で、柄本明が絶妙な田舎親父ぶり。
そして特筆すべきなのが、舞台となっている美瑛。
日本で最も美しい村とされる美瑛の風景が、登場人物たちを抱き、見る者の心を捉えて離さない。
俗かもしれないが、こんな土地での生活…憧れる。
心温まる感動作故、出来すぎている点や難点もある。
不良仲間の強引な誘いを断れず、犯罪に手を染める徹。その時、押し入った家、盗んだ物は…。幾ら妻の願いとは言え、こんなに寛容でいられるだろうか。
徹と紗英の交際に反対する紗英の両親の描かれ方が典型的。特にヒステリックな母・吉田羊はウザい。(柄本明は「北の国から」の某エピソードの菅原文太のように最初はおっかないが、妻を失った篤史をかまったりと好助演してるのに…)
樋口可南子と杉咲花、ダメ男を支える女神のようだが、さすがにデキすぎて、男の願望か理想。
格別素晴らしい!…というほどでもないが、後々思い出した時、ああ、いい映画だったなぁ、と思える良作。
北海道美瑛町の美しい自然と人間臭い人々
当方20代後半の夫婦で観に行きましたが、感動して泣きました
初めの段階では、ノンビリとした北海道の風景や余生を幸せに暮らす夫婦のシーンが長閑で良かったのですが少し長く感じ、もしかして眠くなる映画かななんて思いましたが、次々と起こる出来事に引き込まれてからは早かったです(笑)
夫婦愛が描かれているのは予告からもビシバシと伝わってきてるので、予想できましたが、
細部に盛り込まれてくる生と死というテーマ、人間臭い人々の交流や、生きているうちに自分が起こした問題と自分や家族たちがどう向き合っていくかということが盛り込まれており、観ていて飽きなかったです
佐藤浩市さんと樋口可南子さんの好演はもちろんのこと、脇役にも豪華な俳優さん揃いで素晴らしかったです
個人的には不器用で冷たい夫が妻が亡くなってから妻の大切さに気付くという在り来たりなストーリーかと思っていましたが
最初から夫が妻のことを本当に大切にしていて、仲の良い夫婦だということが伝わってくる脚本だったのがよかったです。
これから私たち夫婦も何年一緒に居られるかわかりませんが、毎日一緒に居てくれている夫や家族を改めて大切にしたいと思える映画でした
あっちゃんへ。
原作「石を積むひと」の舞台を日本の北海道に移して映画化。
原作では老夫婦らしいが、今作ではまだ中高年50代の夫婦。
佐藤浩市、樋口可南子というビッグネームを揃えて豊かな
景色と共に描かれた夫婦愛の物語。取りたてて物凄い期待
はしていなかったが、美瑛の丘は綺麗だろうし、役者達は
巧いだろうし、美味しそうな料理が見られるかも?なんて
いう単純な欲望で観に行った。原作が洋書というのもある
だろうが、一見すると日本人ぽくないなぁと思える描写が
あったりはするのだが、いや北海道だからアリか、これも。
と、特に奥さん役樋口の演技に見入った。こんな奥さんが
いたら、そりゃ旦那さんたちは豊かな老後が送れるだろうと
思えるほど、いい奥さんである。中盤で、苦しい工場経営の
過去を描いた当時の回想を観ても、あぁこの奥さんで本当に
良かったよねぇと思うばかり。旦那さん(篤史さんなので)を
あっちゃん、あっちゃん、と呼んでいるところも微笑ましい。
彼らを手伝う若者が起こす騒動がかなり唐突で「?」と思うが、
中盤から登場する実娘とのエピソードには居心地が悪かった。
この父親と娘のやりとりのぎこちなさが実家と似ているのだ。
冒頭から、父親はとある一件で娘と疎遠になっているのだが、
母親の急死で接する時間が長くなる。蟠りは解けたものの、
なんだー?このぎこちなさは。というくらいに父親の態度が
何とも不自然。なぜ自分から話しかけられないんだろうな。
武骨で不器用だった夫が妻の遺した言葉(=手紙)を通して、
周囲の人々と交流を築き、助け合えるようになるまで。が
大自然の中でゆっくり優しく描かれていく。あのネックレス、
返ってきて本当に良かった。二人には素敵な贈り物だから。
(いずれはどちらかが先に逝く。毎日を大切に生きなくちゃね)
夫婦で観に行ける大人の映画
最後に「自分は相手に何を残せるだろうか」と考えてしまう映画です。
夫と妻、親と娘、立場は違えども相手が亡くなってしまった失望感を何が埋めてくれるのか、埋める事が出来るのか考えます。
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