チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛のレビュー・感想・評価
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この空気の醸成、題材、美術、衣装は見事というほかない
原作者のデボラ・モガーが、泣く子も黙る巨匠(戯曲家)トム・ストッパードと共に脚本を手がけた歴史劇。当時のオランダで希少価値の高いチューリップ球根の価格が高騰して投機の対象となったことはよく知られた話だが、このダイナミックで狂騒的な時代背景と呼吸を合わせるかのように、幾人もの登場人物たちが絡み合って運命を翻弄される物語、といえば良いのだろうか。
一時は『英国王のスピーチ』のトム・フーパーなども監督候補に挙がったりしたようだが、最終的にメガホンを取ったのは『ブーリン家の姉妹』といった歴史劇でも高評価を得たジャスティン・チャドウィック。このチョイス、決して間違ってはいないし、現にむせ返るほどの空気感の醸成や美術セット、衣装デザインなどの細部の作り込みは実に見事だ。しかしこれほど完璧に準備された細部が、ややチグハグに組み合ってしま感も否めない。面白いが、惜しい。もったいない。それが正直な本音だ。
バブル(bubble)と球根(bulb)は似ている。
かつてオランダでチューリップの希少種の球根が投機対象になったのは有名な史実だが、この時代設定をある屋敷を中心に展開する男女の人生模様に絡めて描く物語が興味深い。チューリップ・バブルの狂騒と、冷静な判断ができなくなる恋の熱狂。熱(fever)に狂わされ人生を踏み外していく彼らの悲劇は、現代の私たちにもどこか通じるものがある。
原作はフェルメールの絵に着想を得たベストセラー小説。「ブーリン家の姉妹」で中世ヨーロッパの時代劇の実績があるジャスティン・チャドウィック監督は、確かにフェルメールの絵画のような風合いの映像で人物を映し出す。薄汚れてくすんだ町の景観と、ソフィアがまとう鮮やかなコバルトブルーのドレスのコントラストもいい。女中マリア役のホリデイ・グレインジャーは、ちょっとドリュー・バリモアの若い頃に似ていて、ほどよいポッチャリ感が細身のアリシア・ヴィキャンデルとこれまた好対照。
嘘によって男たちの人生が狂っていく
チューリップバブルを描いた映画ということで観てみた
R15+らしいがそこまで過激な描写はないように思う
孤児院の若い女のソフィアが
貿易商のコルネリスの経済力によって妻になり
その夫との子どもを希望される
そこに若い画家がやってきて
ソフィアと画家が不倫関係になり
二人で逃避行するために
画家はチューリップの投機に手を付ける
当然、それは失敗してしまう
その後、マリアが妊娠したことにより
その子供をソフィアの子供にすることを考え
自分は出産のために死んだことにするという計画を立てる
計画のあと、ソフィアは不倫の熱が冷めたが
自分の居場所がなくなってしまった
ここまで大胆な計画を立てたなら不倫愛を貫くかと思ったがそうでもない
登場人物、世界観の雰囲気はよかったが
やってることは不倫愛
それを世界観とかで綺麗にみせている
なんというか全体的にソフィアの不倫と嘘によって
男達の人生が狂っていく感じになっている
マリアの恋人だった魚屋もソフィアの不倫を
マリアと間違えたことがきっかけで海軍に行ってしまう
コルネリスは過去に自分の妻と子供が亡くなった過去があり
真実をすべてしっても共犯者だったマリアを許すどころか
財産も渡してしまうので寛大だ
ソフィアをカネで買ったという負い目があったのだろうが普通に良い人だった
チューリップバブルに対しても冷静だし
さすが貿易で財を成した人だ
最後に全体的にハッピーエンドっぽくなっているのが
少し無理やりっぽい
大胆不敵な替え玉計画
期待したほどの出来ではなかった・・が、
欧州大河は大好物
残るものと消えるもの、描く画家描かれる女
チューリップは短い間だけ綺麗に咲いて枯れ果ててしまうし、チューリップの球根の値段がバブルのように高騰し続けるのも短い間、美しくて儚い一瞬の幻のようなもの。
反対に、描かれた女の肖像は、歳を取らないし、美しいままで残り続ける。名のある画家の絵ならば、価値が落ちていくこともないもの、それが絵、という芸術。
画家はお金持ちに対しても絵を描いている間だけは、好きに振る舞えるし、ポーズや、動かないことを、指図することができる。立場の逆転。
画家は一方的にモデルを見つめ、モデルを描く。
モデルは見つめられ、描かれる。受動的でいるしかない。
それでも、最後の場面で、年老いた修道女が「この絵のモデルは美しい」と言ったことが印象的だった。決して「この絵は美しい」ではない。結局は描いた画家より、描かれたモデルに焦点化されていく。
謎めいたフェルメールの絵が、きらきらした光を内包するあの絵の雰囲気がそのまま映像になったかのような映画だった。
タイトルなし(ネタバレ)
この状況なら若い男に夢中になるのもわかる。
一獲千金を得ようと男たちが奮闘するのもわかる。
わかるんだけどコルネリスが悪い人じゃないだけに微妙な気持ちになるしこれだけ大掛かりな事しといて結局なんなんだって感じだしラストの後日談が適当なのも気になった。
マリアの1人勝ちなのがなんだか納得いかない。
コルネリスに感情移入
この作品で感情移入出来たのはコルネリスだけでした。若く美しい女性ソフィアをお金で買った、という事実だけだと暴君を想像してしまいますが、実際はとても優しくて良い夫。それだけに冷酷すぎる仕打ちを受けているのを見るのは辛かったです。
ソフィアは貧乏ゆえ買われる他なく、いくら大事にされてるとはいえ相手は初老。イケメン画家と出会ったらそりゃ不倫もしたくなるかなぁと序盤は理解できましたが、子どもを産んで死んだことにするなんて企みは異常過ぎます。事実を知ったコルネリスが可哀想で(泣)
しかし1番理解に苦しむのはマリア。召使いの分際で、よくしてくれた主人を脅すとは。産んで速攻でコルネリスにバレてしまったのもこの人のせい。
殺されてもおかしくない裏切りなのに、ちゃっかり家も資産も家族も手に入れてハッピーエンドというのにはモヤモヤしました。
結局コルネリスも幸せになれたから良かったけれど、せめてマリアは解雇して追い出して欲しかったです。その優しすぎるところがまた素敵なんですが。
チューリップにしろ何にしろバブル崩壊は恐ろしいと感じました。
画家とモデルの恋~光と影の映像は美しい!
エンディングまで、目が離せない❗
イメージが覆される作品
バブルと愛
タイトルなし
西洋絵画好きならば特に満足できる映画だと思います
17世紀中葉のアムステルダムが舞台
正にオランダ黄金時代です
フェルメールに代表されるオランダ絵画の黄金時代の幕開けでも有ります
当時のオランダは欧州でも最も繁栄した国でした
経済的繁栄は当然バブルを産み、そしてまた芸術のパトロンを生み出します
西洋絵画好きならば特に満足できる映画だと思います
でなければ見所の意味もなく、本作を観る意味も意義も半減してしまいます
その見所とは、その時代のアムステルダムの街並み、暮らしぶり、習俗、衣服などがまるでタイムマシーンで当時に潜入して目撃しているかのような迫真さです
海外ではベストセラーという原作は読んではいませんが、バルトロメウス・ファン・ デル・ヘルストが1645年に描いたオランダ富裕階級の家族を描いた肖像画の「ゾフィア・トリプの肖像」が着想の原点のようです
フェルメールの作品に至る流れと背景が自然と理解できる映画だと思います
窓辺に立つソフィアの肖像画はフェルメール風です
フェルメールといえばウルトラマリンブルーの青
ですが、その色のことにも触れ、その色のドレスをヒロインはまといます
2019年当地でも巡回展で開催されたフェルメール展で見た、同時代の多くの芸術家達の絵画が思い出されます
ヒロインより女中のマリアの方が肌が白いのはどういうこと?と思っていたら終盤で種明かしがありました
豪邸も子供達の喧騒に満たされてこその幸せです
花は直ぐに散ります、しかし絵画は長く残ります
色恋は花火のように燃え上がりますが消え去るのも早いものです
その色恋の先にある子供達に満たされた家庭の姿こそが本当の財産なのです
それがテーマであるとそのモノローグが告げていたのです
17世紀オランダのチューリップ・バブルを知り、アリシアの美しさに見惚れた作品
この作品は、フライヤーの美しさとその紙上に記載されていた”花に狂い、愛に狂う”という、赤江獏作品のタイトルのような妖美なフレーズと”フェルメールの世界から生まれた物語”というコメントを観て、即、鑑賞を決めた。
17世紀のオランダ・アムステルダムの孤児院で育った美しい少女ソフィア(アリシア・ヴィキャンデル)が歩む人生を当時の風習、衣装も含めて鮮やかに描き出している。
それにしても、錚々たる俳優達の顔触れである。
クリストフ・ヴァルツ(コルネリス・サンツフォールト:富豪であり、ソフィアの父親程の年齢差のある夫。劇中、その結婚の背景もしっかりと描かれる)、ソフィアが反発心から徐々に惹かれていくデイン・デハーン演じる画家ヤン・ファン・ロース(フェルメールを匂わせている)、チューリップの球根栽培に精通するウルスラ修道院の院長をジュディ・デンチ。他にザック・ガリフィアナキス(ハングオーバーシリーズの印象が薄くなったなあ、褒めてます)、トム・ホランダー、ジャック・オコンネル・・・。
ストーリー立てもしっかりしていたし、雰囲気も醸し出していたし、1年経った今でも細部まで覚えている作品。とても面白く鑑賞した。敢えて言えばもう少し尺が許せば(この作品は105M)深みが出たかなあと思った作品である。
チューリップの派生機種の貴重さなどは知っていた積りだが、この映画を観て、当時から貴重なものだったのだなあ、と再認識した作品でもある。
<2018年10月6日 劇場にて鑑賞>
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