「オッさんの涙腺崩壊」きっと、星のせいじゃない。 Kさんの映画レビュー(感想・評価)
オッさんの涙腺崩壊
うちに子どもはいないが、ずっと親の視点で主人公の2人を見ていた。「16歳でがんで死ぬより最悪なことはこの世でたったひとつ、がんで死ぬ子どもを持つことだ」。どんな苦しみを乗り越えれば、ティーンエイジャーの少女がこんな達観した考えに思い至るのだろう。原作者のジョン・グリーンは執筆に際し、実際に難病で苦しむ子どもたちの取材を重ねたと聞く。だから、これは作者の創作ではなく、子どもたちのリアルな言葉なのかもしれない。彼らは、子どものまま自分が死ぬことを受け入れているばかりか、それを悲嘆するという段階すらとうに過ぎて、自分の死後のことを常に意識しながら「余生」を送っている。人は長く生きたから大人になるんじゃない。人生において自分の無力さを思い知ったとき、子どもはもう一人で人生を歩み始めているのだろう。それをつかず離れずの距離で支えるご両親。本当に頭が下がる。映画では難病患者の自助グループが登場するが、じつは家族の自助グループもあり、独自にミーティングが開かれているらしい。子どもたちが日々弱っていくさまを目にしつつ、それでも自分たちの人生は続いていく。「母親業はもう沢山」という映画の台詞は、難病の子どもを持つ親御さんすべての偽らざる気持ちを代弁したものだろう。アメリカ文化がすべて良いとは思わないが、難病家族を持つ経験者同士でしか分かり合えない苦労や喜びを共有し、癒し合う場があるということ。その点は素直に羨ましいと思った。
もう一度、原作を読んでみよう。
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