劇場公開日 2014年12月20日

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「抱きしめる幸せ」ベイマックス cmaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0抱きしめる幸せ

2014年12月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

興奮

幸せ

どんなに能力がある人でも、ひとりでは成し遂げられないことがある。へなちょこな集まりでも、皆だからこそできることがある。…ある意味、使い尽くされた・語り尽くされたメッセージを、大切な人の喪失を乗り越えることの難しさを絡ませて、じわりじわりと語る本作。ストーリー以前に、これまでのアニメでは観たことがなかった・体験したことがなかった躍動感が魅力的だ。近未来にして懐かしさもある街・サンフランソウキョウ。その街並みや行き交う人々を目にするだけで、ワクワクしてくる。「思わず抱きしめたくなる」ふわぷにのベイマックスのビジュアルや動き、質感は言わずもがな。どぎつさは皆無のスピード感溢れる戦闘シーンにも息を呑んだ。
観始めてしばらくして、おっ?と思う。主人公・ヒロは、(定番の)ひ弱なダメキャラではない。頭が良く大人社会に打って出ることもへっちゃら。そのくせ、目標が見出せず、才能を持て余している。けれども彼には、最大の理解者であり社会との橋渡しを務めてくれる兄がいる。兄の心遣いで飛躍への足がかりをつかんだはずが、思いもよらぬ事件が起き、ヒロは深い闇へ沈み込む。
そんな彼を引き上げてくれるのが、兄の遺したケアロボット・ベイマックスだ。ヒロには、おっとりしたベイマックスの挙動が危なっかしく思えて仕方がない。しかし、いつしか、ベイマックスに守られ、頼っている自分に気づく。さらには、関わりを避けようとしてきた仲間たちにも目が向き始め、共に巨大な陰謀に立ち向かっていく…。
「ベイマックス」は、マーベルコミックが出展らしい。なるほど、と少し納得した。ヒロが発明するマイクロボットは、スパイダーマンに通じる光と影を併せ持っているし、ヒロと仲間たちは「キック・アス」(マーベルではないけれど、原作はアメコミ)を思い起こさせるような等身大ヒーロー。ベイマックスの可愛らしさで女子の心をくすぐるだけでなく、ヒーローたちの躍進で男子のハートを鷲掴みにしてしまうパワーがある。案の定、同伴した3歳児は、画面に飛び込んでいきかねない勢いの興奮ぶり。大いに盛り上がっていた。
そして母親はといえば、膝の上の柔らかな生き物を、ベイマックスのように抱く喜びを改めて実感した。もしかすると、この映画をいちばん幸せな気持ちで味わえるのは、傍若無人に膝に乗っかる子どもがいる親、かもしれない。

cma