「やさしい宝物」海街diary 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
やさしい宝物
「空気人形」以来となる是枝裕和監督の非オリジナル映画。
ベストセラーコミックを元に、3姉妹と腹違いの妹の絆を描く。
今年のカンヌ国際映画祭コンペ部門にも出品された話題作。
まずは何と言っても、豪華4大女優の共演。
長女・綾瀬はるか、次女・長澤まさみ、三女・夏帆、そして腹違いの四女に広瀬すず。
こんな美人4姉妹おらんやろッッッ!!
ここだけファンタジーみたいだけど、さすが華のある女優陣。
画面に映るだけで、パァ~ッと魅力的に輝く。
ナチュラルなやり取りはもはや癒しの一時で、ずっと彼女たちを見、ずっと作品世界に浸っていたくなる。
4人の女優の演技合戦も見所。甲乙付け難いが、
物語の要でもある広瀬すずが一番の儲け役。姉たちの家庭を壊した浮気相手の子である事に引け目を感じており、瑞々しく、守ってあげたくなるくらい愛らしく、好演。年末の新人賞を多数受賞するだろう。
姉たちも、綾瀬はるかがしっかり者の長女でうっすら原節子を彷彿、長澤まさみが相変わらずの抜群スタイルとちょいちょい露出のある姿で色気もほんのり、夏帆がいい感じでマイペース、絶妙なアンサンブル。
これだけの美人女優たちが共演すると、ネット上ではディスる声が。
「劣化した」「顔がヘン」「整形した?」などなどすでに言われているが、こういう輩は何を勘違いしてるのだろう?
本作は写真集でもなく、彼女たちもモデルでもなく、これは映画、彼女たちは女優なのだ。
女優は演技して魅了させる。
影口叩かれる言われは何処にも無い。
これぞ是枝演出!
何気ない日常の積み重ねを、心の機微を、繊細に描いていく。
最初はぎこちなかった4人が少しずつ少しずつ家族になっていく様は見ていて微笑ましい。
一人で背負い込んでしまう長女・幸と四女・すずは何処か似た者同士。
自由奔放な次女・佳乃と三女・千佳の掛け合いがユーモラス。
性格が真逆の幸と佳乃の日常茶飯事の口喧嘩は、姉妹こそあるあると共感する筈。
大事件や大きな出来事は起こらないが、ありふれた日常こそがドラマ。喧嘩し合ったり、笑い合ったり、涙し合ったり…そんな“平凡”が、人の営みの最大の幸せ。
気付けば、是枝監督は家族映画が多い。「誰も知らない」は変化球とは言え、家族の話。「歩いても 歩いても」も然り「そして父になる」も然り。
家族映画の名匠・山田洋次とはちょっと違う、是枝監督もまた家族映画の匠。
4姉妹の脇を、豪華芸達者たちが固める。
もう一人の主役と言っても過言ではない鎌倉の四季の映像が反則なまでに美しい。ああ、癒される…。
管野よう子の音楽もこれまた美しく、作品世界に見事に合っている。本当に、癒される…。
4姉妹が住む古びた家が風情があって、温もりあって。
しらすと梅酒が美味しそう!
生まれてきた子に罪は無い。
腹違いとは言え、血が繋がっている家族。
引け目を感じる事なんか無い。
ここに居ていいのだ。
一緒に住み始めて、嫌な事があっただろうか。
だって、こんなにやさしい宝物を。
こういう心温まる邦画が好きな自分にとってはドストライク!
望めるなら、続きが見たい。
彼女たちの一年後、数年後、その後を。