劇場公開日 2015年6月13日

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「吉田秋生さんの世界だった♪」海街diary 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5吉田秋生さんの世界だった♪

2025年6月2日
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鑑賞方法:映画館

是枝監督が吉田秋生さんの原作第1話を読んだとき
「これを他の人に映画化されたくない!」
と思ったそうだから、
監督自身の原作への思い入れとリスペクトは相当なもの。
愚直と言っていいくらい、原作の世界を忠実に描き出そうとしている。

もちろん、
公開当時単行本にしてすでに6巻出版され、継続中だった連作(その後9巻で完結)だから、
わずか2時間かそこいらで描ける範囲には限りがある。
軸は、第1話「蝉時雨のやむ頃」
つまり、「すず」が鎌倉に引っ越してくるまで。

そしてそれ以降、登場人物の数だけある物語のなかで、
すずの物語を中心に、海猫食堂の幸子さんの話を加え、
その他は基本的にカット。
まあ当然のことで、文句を言う筋合いはない。

父の死→葬式から始まり、
幸子さんの死→葬式で終わり、
(さらに真ん中に、祖母の七回忌が挟まり)
その間、最初はどこにも自分の居場所がないと感じていた「すず」が
「ここにいていいんだよ」と言われて居場所を見つける物語。

縁先の庭の
三姉妹の母が生まれた年に植えた樹齢55年の梅からつくる梅酒が、
いろいろと象徴的。

一見大きな事件は起こらないように見えるかもしれないが、
人は死ぬ、
あるいは死なないまでも、いつかは別れがくる、
姉妹で仲よく喧嘩しながら祖父母以来の家に共同生活しているこの暮らしもいつまで続くか分からない、
という薄氷の上で人生は送られてゆく、
でもそれでも人は、笑おうとしながら、
ともに生きる道を見出してゆく、

そういう物語。

映画化に関して言えば、
長女の「シャチ姉」は、綾瀬はるかさんではちょっと柔らかすぎた気がする。
すずも、「シャチ姉似」のキツい部分が、ちょっと描かれてなかった。
その辺が、ちょいと残念。

でもそれ以外は、まさに原作の世界が眼前に展開していた。
ずっとその世界に浸っていたかった。

島田庵
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