「再生のキューバサンド」シェフ 三ツ星フードトラック始めました sankouさんの映画レビュー(感想・評価)
再生のキューバサンド
どん底まで落ちた一流シェフが再び家族とともに人生をやり直し、見事に返り咲くまでを描いた、これぞ観たら幸せな気持ちになれるお手本のような作品。
まずは腕は一流だが大人げないカールがどん底に落ちるまで。
彼は一流レストランの料理長を任されているが、新しいメニューを開発したいという彼の願いは保守的なオーナーの一言でかき消されてしまう。
ある日、有名な料理評論家ラムジーはカールの作った料理をブログで酷評する。
それに対してカールがTwitter(現:X)で口汚く反論し、再戦を挑んだために炎上する。
カールは新しい料理で勝負をしたかったが、オーナーと再び対立し解雇されてしまう。
カールは店を訪れたラムジーに怒りをぶつけるが、その様子がネットに拡散されたため、彼は新しい職を得ることも出来なくなってしまう。
こうして彼は地位もプライドも失ってしまう。
が、すべてを失ったわけではない。
ラムジーも傲慢だが、同じように家族を顧みずに自分のプライドを頑なに守り続けたカールもまた傲慢だった。
彼は別れた妻イネスと息子のパーシーと共に出発点でもあるマイアミへと旅立つ。
そこで彼はパーシーと、彼を慕ってマイアミまで追いかけてきたかつての部下のマーティンと共に、キューバ料理の移動販売として再スタートすることを決意する。
ボロボロのキッチンカーが蘇り、試作品のキューバサンドが完成するまでの展開はとてもワクワクさせられる。
そしてフードトラックが軌道に乗るまでの爽快感。
キューバサンドが本当に美味しそうで視覚的にも楽しめる作品だ。
これはカールがシェフとして返り咲く物語でもあり、家族の再生の物語でもある。
彼はパーシーと心を通わせることによって、傲慢だったかつての自分を顧みる。
キッチンカーの助手としてだけでなく、Twitterを使った広告塔としても活躍するパーシー、そして善意の塊のようなマーティンの存在にも心がほっこりさせられた。
画面に拡がるツイートが鳥の姿になって飛んでいく演出も面白かった。
が、いずれTwitterの名前も人々の記憶から消されていくのだろうか。
カールは家族との関係をやり直すだけでなく、ラムジーとも和解する。
そして彼の出資によって再びレストランのシェフとして返り咲く。
出来過ぎの話ではあるが、こういう底抜けに幸せなストーリーに心が救われるのも確かだ。
エンドロールにメイキング風景が映し出されるが、カール役のジョン・ファブローが本物のシェフに見えたのは、相当な鍛錬があったからなのだろう。