<映画のことば>
「正義は見返りを求めず、か。」
「愛は…でしょ。」
本作の安田監督は、低予算で味わいのある映画を製作する方ですけれども。
そういう言い方をすれば、志郎のユキに寄せる想いの熱さに、町工場の「ものづくり」の技術がミックスされて生まれた「正義と愛の低予算ヒーロー」の物語とも評せると、評論子は思います。
佳作だったとも思います。
(追記)
子供心に不満は抱いていても、母親が心を込めて朝食に用意していた目玉焼きは、志郎にとっては、忘れることのできない味だったのでしょう。
ユキがアルバイト先の喫茶店で焼いていた目玉焼きは、彼にとっては「ユキに対する想い」という調味料がたっぷりとかかった味付けだったほか、母親への思慕でもあったことでしょう。
そこに、「もうひとつの愛」があったことを感じ取ったのは、独り評論子だけではなかったことと思います。
往時は一個だった目玉焼きの目玉―。しかし、ユキがこのお店で焼いて出していた目玉焼きの目玉は二個に増えていたのは、志郎の子供時代に比べ、このニッポンという国の経済成長の証(あかし)と、評論子は受け取りました。
以上のとおり考えると、本作のタイトルに「目玉焼き」が入っているのは、やはり、それなりの含意があったのだと、評論子的には、納得もしました。
(追記)
本作のタイトルに関わって、もう一つ言えば、この「拳銃」は、マズイんじゃあないでしょうか。
チンピラどもを、こんなにも簡単に片付けるほどの殺傷能力があるのなら、そもそも法律の規制に引っ掛かりそうです。
いかに「おやじ狩り」狩りのために開発したとはいえ、それを使った志郎も(発射罪:銃刀法)、それを作った町工場の社長さんも(許可事業者以外の製造罪:武器等製造法)、手が後ろに回らないか、心配になってしまいます。
令和7年の時あたかも、ニッポンの警察は、クレーンゲームの景品として輸入された中国製のおもちゃの拳銃「リアル・ギミック・リボルバー」の回収に躍起になっているという、当(まさ)に「その時」でもありますから。
(追記)
志郎が子供の頃に遊んでいた、仮面ライダーのビニール人形。
彼にとって「正義の味方」は、何と言っても仮面ライダーだったのでしょう。
最後の最後のシーンで、問われて名乗ろうとするシーンで「仮面…」だけで際(きわ)どくカットしたのは、著作権に配慮するという「大人の事情」だったのだろうと、評論子は思いましたけれども。
しかし、その余韻はたっぷりと味わうことのできた「粋(いき)な計らい」だったことも、間違いのない演出だったと考えます。
(追記)
心の内底から想う男性がいる女性が、その男性を心の内に秘めながら、いかにその男性のためだとは言え、他の男性に体を許すということが…果たして実際には、あり得るのでしょうか。
ユキがあの職業(巷間では、それは「人類最古の職業」とも言われる)を選び取っていたということは(映画のストーリーとしてはともかく)現実味は薄いのかとも思われてしまい、ちょっぴり作品のシズル感が損なわれていたようにも、評論子には思われました。