劇場公開日 2015年10月3日

「これが本当の意味でのバトル漫画だ!」バクマン。 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5これが本当の意味でのバトル漫画だ!

2016年4月14日
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鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

興奮

幸せ

「デスノート」でも知られる原作・大場つぐみ×作画・小畑健のコンビで週刊少年ジャンプに掲載されていた同名漫画の実写映画化。
ジャンプ連載を目指す高校生漫画家コンビの奮闘。

毎度の事ながら原作未読。
原作ファンには不満も多いだろうが、個人的には満足。
マジ、面白かった!

友情!努力!勝利!
ジャンプ連載漫画だけあって、王道の青春サクセス・ストーリー!
いや、邪道かもしれない。
ジャンプの中で、ジャンプで一番になるという邪道。
敢えてそれに挑んだ大場×小畑コンビは、主人公コンビに自らを投影。
夢に向かって一心不乱、無我夢中。
一歩近付いた夢。
ぶち当たる壁。
厳しい現実。
悩み、苦しみ。
超えられないライバルの存在。
仲間の支え。
打破して若者はまた夢を目指す。
いつ見てもいいね、こういう話は。
ズバリ言うと漫画を描くなんて地味な作業なのに(漫画家の先生方、失礼!)、どうしてこうも胸躍る興奮とスカッと爽快な気分にさせられるのか!

さらにそれに拍車をかけるのが、“ジャンプ”。
ジャンプ黄金期に読んでいたので、作品の実名登場にはワクワク。
一番好きだったのは超ベタだけど「ドラゴンボール」、その他有名なアノ作品コノ作品、マイナーなアノ作品コノ作品、色々次から次へと思い出した。
また、ジャンプトリビア。
作品ポスターが貼られた廊下、まるでゴミ屋敷のような編集部、連載を決める会議、読者アンケートランキングなどなど、ジャンプを読んで育った者には感涙モノ。

大根仁監督の手腕は無視出来ない。
主人公コンビ、最高&秋人とライバルのエイジの漫画と実写を融合させた“バトルシーン”の映像テクニックなどユニークで秀逸。
飽きさせない展開、編集、サカナクションの音楽も作品にマッチ。

漫画家コンビなので主演二人の相性の良さが物を言う。
「るろうに剣心」でも共演し、プライベートでも仲の良い佐藤健と神木隆之介のコンビなら文句の言いようも無い。
掛け合い、信頼、衝突、ひしひし伝わってくるほど体現。

最高が漫画家を目指すきっかけの一つが、同級生の美少女。
声優志望で、自分らの漫画がアニメになったらヒロインの声をやると約束。
こんな娘が同級生だったら…。
仄かな青春ロマンスもそつなく。
演じた小松菜奈が可愛いんだなぁ…。
どうしてこの娘ってこんなにフレッシュで透明感あるんでしょ!?

脇がまた個性派揃い。
担当編集の山田孝之のナイスサポート。
厳しさの中にも優しさを見え隠れさせる編集長リリー・フランキー。
キャラ立ちが半端ない同期漫画家たち。特に、新井浩文と皆川猿時にはウケた。
そして、10年に一人の天才高校生漫画家、新妻エイジを演じた染谷将太。
登場する度イラッ!イラッ!とさせる奴だけど、終盤の彼ならではの“嫌味激励”には胸が熱くなった。
最高と秋人にとってエイジは常に立ちはだかるライバルだが、実はエイジにとっても最高と秋人は最も意識してたライバルだったんじゃないだろうか。
悟空とベジータよろしく、ライバルが居て自分も飛躍出来る。

漫画家でも無いのに知ったような事は言えないが…
漫画家って大変。
漫画家ほど大変な仕事はそうそう無い。
第一にアイデア、第二にアイデア、第三もやっぱりアイデア。
幾ら画が上手くても、肝心なのはアイデア。
話が面白くないとただの紙切れ。
原作も作画も一人ならとんでもない心労だろうし、二人なら意見のぶつかり合いもある。
劇中の台詞、「漫画は読者に読んで貰えて初めて漫画になる」。
これは映画やその他でも置き換える事が出来る。
作者も読者も両者が満足出来れば理想。
が、なかなかそういかない。
作者が面白いと感じたものを書けば読者にもそれが伝わるのか。
読者目線のものをひたすら描けばいいのか。

それから、〆切。
これが漫画家にとって、打ち切りと同じくらい恐ろしいものではないだろうか。
何本も連載を抱えていた手塚治虫は毎日〆切に追われていたと聞く。
移動中の電車や車の中でも漫画を描き、家族旅行にも担当編集が着いてきて家族が眠る隣の部屋で漫画を描いていたという。
こんな縛られた生活は地獄だ。

そして、短命。
偉大な漫画家は短命が多い。
手塚治虫60歳、藤子・F・不二雄62歳。
劇中でも最高がぶっ倒れるが、日々の心労と机にかじりついたままの姿勢…体に害が無い筈が無い。

何故、漫画家はそんな険しい道を選ぶ?
単に漫画が好きだけだったら誰でも出来る。
漫画を通して自分を表現する。
漫画は自分の一部。
それこそ、魂を削るように。
漫画は戦いだ。
ライバルとの戦い。
編集部との戦い。
読者との戦い。
己との戦い。
汗水垂らして、身を削って、やっと一話書き上げても、すぐまた次の〆切と戦う。
これが本当の意味でのバトル漫画だ!

もう一度、マジ面白かった!
嗚呼、劇場公開時、「ギャラクシー街道」なんかよりこっちを観に行けば良かった~!

近大
しろくろぱんださんのコメント
2020年5月5日

共感いただいてありがとうございます。
表現がいいですね~。本当に。

しろくろぱんだ
(^^)さんのコメント
2016年4月24日

この映画の良さがとても良く伝わりました。

(^^)