劇場公開日 2015年5月30日

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「監督作連作で熾烈な世界を生き残れるか、園子温!?」新宿スワン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5監督作連作で熾烈な世界を生き残れるか、園子温!?

2015年10月10日
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鑑賞方法:DVD/BD

怖い

単純

興奮

新宿・歌舞伎町。
ひょんな事から、女たちを水商売へ送るスカウトマンとなった一人の青年。
そこは、熾烈な弱肉強食の世界だった…。
大ヒットコミックを園子温監督が映画化。

今年、謎の監督作連作が続く園子温。
本作を皮切りに、「ラブ&ピース」「リアル鬼ごっこ」「みんな!エスパーだよ!」と4本は異常と言ってもいい。
その為どうしても、疑問や作品一本一本の質への厳しい声が上がるのは必然。
「愛のむきだし」「冷たい熱帯魚」のようなKOパンチ級の入魂作が見たい、と。

欲望渦巻くスカウトの世界。
その「愛のむきだし」「冷たい熱帯魚」の頃だったら意外な感じもするが、今となっちゃ特に違和感無い。
豪華キャストを配し、職人演出に徹した歌舞伎町スカウトマン版「クローズ」。
初めてと言っていいくらいのメジャー級作品でもあり、週末興行ランキングでも初登場1位を獲得。(あの園子温監督作が!)
その分個性は抑えられ、三池崇史が監督でも変わりなかったかも。
もし、あの頃の園子温だったら、せっかくこういう世界を描いているのだから、もっとバイオレンスやエロ描写は過激だったんだろうなぁ、と。

先入観かもしれないが、こういう世界にはマイナスなイメージしかない自分。
実際、縄張り争い、裏切り、金、ヤクなどのオンパレード。
「クローズ」もそうたが、あまりこういう世界とは馬が合わないし、お近づきにもなりたくない。
それぞれの理由・境遇から飛び込んだ世界。
生半可では生き延びられず、生き残る為に自分で身に付けていく強さ、逞しさ。
そんな世界だからこそ、女たちを商品と見ない馬鹿正直な主人公の存在は異端。
彼が与えた、与えられた、各々が見つけ出す幸せ。

寡黙な役や抑えた演技のイメージが強い綾野剛の文字通りの熱演。
伊勢谷友介、金子ノブアキ、深水元基らキャスト全員が不思議なくらいしっくりハマる。
極めつけは、主人公のライバルスカウトマンの山田孝之。さすがの存在感。
男だらけの世界で、可憐な沢尻エリカと凛とした山田優が華を添える。
沢尻エリカや真野恵里菜ら水商売の女たちが皆、胸元露な格好なのが目の保養。
(安田顕の役柄が先日見た「龍三と七人の子分たち」とほぼ丸被りなのは…)

園子温作品において最もエンタメ度が高いであろう本作。
それなりに見れるが、最後にこう言っちゃ何だが、やっぱりこういうジャンルは好きになれない…。

近大