「シリーズのファンだけでなく、シュワルツェネッガーのファンも楽しめる作品。」ターミネーター:新起動 ジェニシス kobayandayoさんの映画レビュー(感想・評価)
シリーズのファンだけでなく、シュワルツェネッガーのファンも楽しめる作品。
2015年7月中旬に“TOHOシネマズ六本木ヒルズ”のスクリーン2にて3D字幕版で鑑賞。
1984年にジェームズ・キャメロンの監督・脚本、アーノルド・シュワルツェネッガー主演で製作され、SFアクション映画の金字塔と言われるほど世界中で愛され続けている『ターミネーター』シリーズ。キャメロン監督の手を離れた『ターミネーター3(2003年)』以降、そこまで成功しなかったシリーズとなったために、時代の流れに乗っかって、遂にリブートされたのが本作『ターミネーター:新起動/ジェニシス』であり、『スター・トレック(2009年)』シリーズのデイヴィッド・エリソン製作、『マイティ・ソー ダーク・ワールド(2014年)』のアラン・テイラー監督等の新たなスタッフで作られた力作です。
自我を持つコンピュータ“スカイネット”と人類の戦争に決着がつきかけていた西暦2029年の時代において、敗北を悟ったスカイネットが人類抵抗軍の指導者ジョン(ジェイソン・クラーク)を過去に遡って葬り去るために一体のターミネーター(アーノルド・シュワルツェネッガー/ブレット・アザー)を1984年に送り込み、母親であるサラ(エミリア・クラーク)を抹殺しようとするが、そこには彼女を守っていた別のターミネーター“ガーディアン(シュワルツェネッガー)”が立ちはだかり、サラを守るために自ら志願し、その時代へやって来た兵士カイル(ジェイ・コートニー)はガーディアンによって鍛えられた戦士となったサラに困惑する(あらすじ)。
このシリーズを愛してやまず、世界的に酷評された『ターミネーター3』も大好きなので、リブートされるというのを初めて耳にした時は戸惑いが半分ありましたが、三作に及ぶスピンオフ小説、自分としては退屈すぎなドラマ『サラ・コナー・クロニクルズ(2008年)』、シリーズの一つだとは思いたくない『ターミネーター・サルヴェイション(2009年)』といった『2(1991年)』のその後が枝分かれし過ぎて、メチャクチャになっていたので、シリーズを延命させるには、これしか最善な方法は無いのかもしれないと思い、それを受け入れ、その後は首を長くしながら楽しみにしていました。その甲斐はあり、これは完全にシリーズの一つとして認められるぐらい、大いに楽しみ、とても気に入りました。
冒頭の未来のシーンから掴みはバッチリで、ピカピカのエンドスケルトン(過去作よりも少しスリムになったような)と抵抗軍の兵士たちがプラズマライフルを撃ち合いながら激戦を繰り広げ、空をハンターキラーが飛び、そこから初登場の蜘蛛型タンクを投下するといった新たな戦術が描かれ、プラズマの色も『1』や『2』と同じ、サウンド(ここが唯一、残念。『1』のリマスター版DVDがリリースされた際に整合性に拘ったキャメロン監督が音を作り直して、統一しただけに、その統一を貫いてほしかったところ)は真新しく、不満は殆どありません。『1』の世界の再現、『2』の要素(同作の没ネタの流用など)が加えられたり、ドラマ版や『〜サルヴェイション』で大きく不満を抱いた部分を再利用(過去から未来へ行ける、進化したターミネーターの登場など)して、リブートしたからこそ通用する形で巧みに描いて見せたりと、面白い点が沢山あり、ワクワクとニヤニヤが止まらず、大作としては久々に興奮できた作品で、個人的にそれは『トロン・レガシー』以来の一作です。
ジェイ・コートニーがカイル役に抜擢されたという知らせを耳にした時には、あまり良くない人選だと思いました。彼は『ダイ・ハード ラスト・デイ』での細身で幸が薄い印象しかなかったので、オリジナルのマイケル・ビーンには程遠いとしか思えなかったものの、その後に『アイ・フランケンシュタイン』のマッチョな天使役などでイメージが変わり、全く悪くなく、今の時代にビーンのような俳優が居らず、仮に居たとしても、そのコピーにしかならないので、コートニーの起用は正解だったのではないでしょうか。逆にエミリア・クラークがリンダ・ハミルトンに似せていたのも良い印象があります。リブートなのだから、独自の感じを出すことも出来た筈ですが、『1』と『2』の続きとして作られた筈のドラマ版でサラを演じたレナ・ヘディが美人過ぎて、微塵もサラ・コナー感が無かっただけに、今回は少し似せて、サラとして違和感の無いようにしたという製作陣の気合いが見ているだけで伝わってきました。
本作は『ターミネーター』シリーズのファンだけでなく、シュワルツェネッガーのファンも十分に満足できる作品だと感じています。政治家へ転身した頃は「もう俳優復帰は無いのでは」と思わせただけに、また復帰して、ターミネーターを演じたというだけで既に嬉しさはありますが、一つの場面で二体のターミネーターが対決するというシュワ・ファンなら狂喜乱舞する演出をやってくれたのは胸が熱くなります。過去にも彼の主演作においては、一つの場面で二人も出てくるというのはあり、『トータル・リコール』、『ラスト・アクション・ヒーロー』、『シックス・デイ』で行われましたが、それらで「一人でも最高なのに、二人も居る構成なんて、まさに感動」と思えた為に、本作の二体のターミネーターの激突シーンに感慨深く、今まではオープニングとエンドロールでしか流れなかったメインテーマとその一部が随所で流れ、ファンサービスに徹しているのも良いところの一つで、斬新な映像と表現を常に生み出してきたシリーズなのに、その表現が少ないというマイナスはあっても、それを帳消しにしているほど好印象な部分です。
製作時の段階で“三部作”構想があったので、もし、本作が内容的、評価の面で成功していたら、きっと、今頃に第二弾か第三弾が公開されていたでしょうが、残念ながら、そうはならず、本作公開前には「私にとっては第三弾だ」と評価していたキャメロン監督の手で本作をも無かったことにされ、2019年公開を目指して、『1』と『2』に続く“本当の正統な続編”が作られる事が明らかとなっていますが、本作から数年しか経過していない短いスパンでの製作・公開となるのは間違いなく、監督は変わっても、デイヴィッド・エリソンが製作で続投するようなので、当初、予定されていた本作の続編で用いる筈だったアイディアを流用している可能性もありますが、そうなった場合は中途半端になる事もあるので、一つも流用されず、本作の続編に関する話をスピンオフ小説かコミックで出てほしいと願っています。勿論、次の作品にも期待したいですが、現段階では本作を気に入っただけに、無かったことにされるという点での戸惑いは本作が製作されるというのが明らかになった時よりも大きいです。もし、可能ならば、本作が成功していた時間軸に入ってみたい、そんな気持ちで本作のレビューを終えさせていただきます。