百日紅 Miss HOKUSAIのレビュー・感想・評価
全77件中、21~40件目を表示
お栄といえば……
葛飾北斎の娘、お栄を主人公にし幕末にさしかかる江戸を描いた杉浦日向子の原作漫画をアニメ映画化したもの。
短編連作の同作品を、主人公の成長物語として仕上げているのは、なかなかよかった。主人公のお栄といえば、1981年に新藤兼人監督が撮った「北斎漫画」で田中裕子が演じていたのを思い出すが、改めて考えると、杉浦日向子も同じ頃にお栄を描いていた事になり、やはりどちらの作品でも、男勝りの勝気な性格ながら、ふと魅力を感じさせる女性である。今回のアニメ化でも、そこは上手く描けている。
ただ一つ気になったのは、原恵一監督は緩急の付け方が今ひとつなのかもしれない。主人公が目の見えない妹に語りかけながら、まるで浮世絵の世界のように周囲の情景を表現するシーンなどは、せっかくのアニメと浮世絵の融合なのだから、もう少しゆっくり描いてほしいと感じ、その一方で、江戸のゆっくりとした時間が流れるはずの日常の暮らしの描写では、何となくもっさりとしてテンポが悪い。まぁ、同監督の他作品をそんな視点で意識した事はなかったのだが、少なくとも本作では緩急が今ひとつと感じた。
原恵一
杏の声が素晴らしい。ずーっと見ていたくなる労作。やはり日本のアニメはレベルが違う。犬とか、植物とか、ユートピア江戸の背景とかなんか凄い。できっちり90分におさめてくる。原田眞人みたいにだらだら150分とかにしない。まぁ単純な労力の問題もあるのだろうが。ただ音楽がちょっと微妙。江戸とロックが合わないとかじゃなくて、単に画が素晴らしいのだから、音が余計。ファンクだったら良さそうだけれど。応為を描いた原作漫画もきっと素晴らしいんだろう。
神々の宿る国
パーッと弾けてくれそうな絵なのに、淡々としんみりした話だった。
絵柄や色合いなんかは好みだったし、演出も面白かったけど、話と話の繋がりが悪い気がして盛り上がってた気持ちが一回一回途切れちゃった。
キャラクターも魅力的な人がいたけど、葛飾北斎のキャラは何か思ってたのと違った。もっと偏屈なイメージがあったから中途半端な立ち位置と人物像のような気がした。
お栄も何だかパッとしなかった印象が残る。結局どういう人物だったのか分からないしキャラクターも掴めないままである。
周りの人や物事のエピソードより、
葛飾北斎とお栄のエピソードを見たかった。
何が言いたかったのかもよくわからないが、柔らかい絵や線、光と影の使い方は印象に残ったので、次回作で何を作るのかは楽しみだ。
江戸の息遣いを感じる
杉浦日向子の漫画「百日紅」を原恵一監督が映画化。
葛飾北斎の娘で浮世絵師・お栄を主人公に描く江戸の人間模様。
杉浦日向子も原作漫画も知らず、原恵一の新作という事で期待していた(いつもながらの)スーパーミーハー(>_<)
橋の上を行き交う人ゴミの中をお栄が凛と歩き、江戸の風景を写し出し、今風のBGMがかかるオープニング。
スッと江戸の世界に引き込まれる。
原作者・杉浦日向子は江戸風俗研究家でもあったとか。
市井の人々の営み、生活感ある町並み、言葉遣いに至るまでその賜物。
そこに原恵一の緻密な演出。
Production I.Gによるクオリティ。
この組み合わせなのだから見事なのは当然。
これほど江戸の息遣いを感じさせるアニメーションは(個人的には)記憶に無い。
実写のようなキャラ造型・描写の原演出。
花魁の艶かしさ。
頬の痩けたお栄は生活の貧しさを感じさせ、キリッとした眼差し、画を書く時の真摯な表情、病弱の妹への優しさ、密かな恋慕…仕草や心情が素晴らしい。
表現が豊か故、江戸っ子言葉で今風に言うと男前なお栄がとても魅力的。
ただの江戸風俗譚だけじゃなく、竜や妖怪などの伝奇モノの要素も。
江戸の世界観とマッチし、幻想的な効果を上げている。
これらも原作通りなんだとか。
先日見た「桜姫」の突然の伝奇描写には失笑したが、題材もあるだろうが、演出の巧みさやセンスの違いだと感じた。
また、「クレヨンしんちゃん」時代から原作品に共通する家族のドラマ。
口では貶すが、浮世絵の師としては敬う父との関係。
病弱な妹のエピソードは“優しく温かく”感動的。
最初どうしても気になってしまうのが豪華俳優による声。
杏は美人で性格も良さそうで好きだが、演技は格別巧いというほどでもないので、声の演技も…。
松重豊も濱田岳も高良健吾もどうしても顔が浮かんでしまう。
しかし、次第に違和感は無くなってきて、この顔触れで実写で見たいような気も…?
時間は90分。
なのでカットされたエピソードは膨大だろうし、展開は淡々。最後もあっさり。
物足りない…と言うより、もっと長く見ていたいと思わせる秀作原アニメーション!
声が合ってた
主人公のお栄の声がとってもよく合ってました。
ハリがあって、意思を持ってて、でも優しい時は優しい声でした。
描いた絵や、空想上の生き物たちが迫力をもって動き出すのは見ていて楽しかったです。
お栄と妹との関係が好きです。
船に乗って、橋の下をくぐる時の人々の足音が少し怖いようで、でも木の音が心地よかったです。
江戸の風景と、ロックとの組み合わせが意外に合うなあ!と思いました。かっこいいです。
江戸に行ってみたくなる風景でした。
江戸の画とロックが合う
百日紅、見てきました。
声で俳優の顔がちらついて…という話を聞いていてどんなもんかねと思っていました。
正直、お栄さんの声は演じた俳優の顔がちらつきまくってましたが、他の方はきにならず。あ、松重さんだ!とか、濱田岳だ!とか、わかりはするけど浮いてないというか…。特に美保純ね。普段のふわふわ感を消していい演技でした。
ギター系のロックがよくあっていて、疾走感がありました。劇伴は全編通してロックでよかったんじゃ?と思いました。
短編の連作漫画を長編映画に仕立てているので、エピソードの区切りが感じられた。そこは原作既読なので仕方がないですけど。
お猶のエピソードが膨らまされていたのは良かったと思う。不憫なまま果無くなった幼子が、世界に喜びを見出していたことを垣間見られて、よかったね、と思いました。
一番よかったのは椎名林檎の主題歌でした。すみません、林檎ファンなもので。
「最果てが見たい」の歌詞が、とても良いです。
教養が試されるような
決して説明的でないので、観客の教養が試されるような作品、という印象。
とてもスマートで、2Dと3Dの使い分けも小洒落ている。
画面の切り取り方が面白い。もっともっと先を行って欲しい!次作が楽しみ。
豪華俳優陣の出演も、私は素敵にマッチしていると思います。
はじまりのみちに続いて濱田岳の使い方の正しさ!
ちょっと暗転が多くて場面が断続的なのが気になった。独特のリズム感かもしれないけど、もっとスムーズな画面展開も今後希望。
しっとりとして良い映画
原恵一監督の期待の本作を楽しみにしていました。
予想を裏切らないしっとりと進行するストーリー。原作の雰囲気も上手く映画向けにアレンジしてあって安心感の中で鑑賞できました。
ちょっと感じたのがいわゆる外国人が見たがるジャポニズムをサービスしすぎ?考えすぎでしょうけどね。
ともあれ、アヌシーでの受賞おめでとうございます!
江戸感は満喫でき気持ちいい
たまたまきのう観た『駆け込み女〜』もそうだったけど、原作が短編連作のエピソードものは長編映画化が難しい。とうしてもフェードアウトで章繋ぎになって、なんとか長編としてグルーブ感がでないものかと思うが、原作が素晴らしいと余計それは難しい。
描かれた世界も力量も素晴らしいのだけど、映画としての圧倒感が欲しくなって、それはつまり原作から離れることになるのだけど、その辺のプロセスが難しいのだろうな
江戸
オープニングの両国橋のCGが、とても壮観で立派だった。
当時のままを再現していたのだとしたら、大工の技術力はたいしたものだと感嘆してしまう。
その当時の情景は見てて楽しかった。
スマホも電話さえない時代。
人と接するには、それなりの労力が必要で、確たる手応えを感じるからこそ、深くも強くもなる時代。
今とはそこが全く違う。
良い悪いじゃない。そういうものが根っこなのだ。
さて…肝心の内容だが、よく分からない。
なぜ、これを作品として選んだのだろうか?
江戸時代でイメージする女性像とは一味も二味も違う女性が主人公。
浮世絵の世界観も、神秘的ではあるが、一つのエピソードの枠を逸脱はしない。
詰まるところ、作品のもつ主張がよく分からないのだ。
主人公はあんなに、ハキハキしてるのに。
声優じゃない演者を多数起用してる意味も分からない。
むしろ、失敗だ。
狙った意図はあるのだろうが、どうにもチグハグで客寄せパンダとしか思えない…。
原作が好きな方なら楽しめるのか?
主人公は何にも惑わされはしないし、引きづりもしないし、成長もしてないぞ?
あの百日紅の絵に集約されたエピソードとでもいうのだろうか?
前半の龍よりは、優しい画風ではあるが…そういう事なのか?
とまあ、江戸ッ子な主人公とは正反対な作品なわけだ。
葛飾応為
お栄の主役の作品なら画号の応為の名を出さないのかと思って見ましたが、なるほど絵描きおしての応為ではなく、一人の人間としてのお栄が描かれていて、とても良かったです。
原作ではお栄より北斎や善次郎の色恋沙汰が多いので、お栄主役の映画はこれはこれで良いなと思いました。
葛飾北斎の粋っぷりや、お栄のカッコ良さ、善次郎や国直も頼もしく、江戸の世俗がよく感じられました。
お猶と北斎が触れ合う瞬間はとても印象的でした。終わり方に少し疑問もありましたが、アニメとはいえ杉浦日向子先生の雰囲気も出てて全体的に良かったです
全77件中、21~40件目を表示