「お栄でござる。」百日紅 Miss HOKUSAI ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
お栄でござる。
杉浦日向子の本は読んだことがないのだが、TVでの解説者
とりわけ「コメディーお江戸でござる」が好きでよく見ていた。
見かけなくなったと思ったらあっという間に亡くなっていて
その急逝に驚いたが、こんな見事な代表作を遺していたとは。
葛飾北斎の娘・お栄(後の葛飾応為)を中心とした当時の江戸が
活き活きと甦る。短編集を繋ぎ合せた作風は、いま公開中の
井上ひさし原作映画と連なる出来映えで勉強できるうえ面白い。
歴史に興味がなくても、この時代にはこんな人達がこんな風に
生きていたことかと当時に想いを巡らせられること請け合い。
リズム感のあるべらんめえ調子が私には特に聞こえがいい^^;
しかし冒頭で唯一困ったのは、今作はアニメなのだが、その
声を担当する声優が有名俳優である点。主人公の杏をはじめ、
あっちでもこっちでも聞いたことのある声ばかり(松重、濱田)
こうなるとその俳優の顔ばかりが浮かんきて、キャラ負けする。
せっかくのいい話なのにこれじゃあ…と最初落ち込んだものの、
とにかく内容がストーリーが面白いので、ぐんぐんのめり込む
うちに声のことは気にならなくなっていた。北斎の一部代筆を
務めていただけあって、腕は一流のお栄。ところが男性経験が
なくめっぽう色気足らずの気性のため、その絵に色が入らない。
不器用ながらも真っ直ぐ浮世絵に取り組んでいくお栄だったが…
複雑な北斎家の事情もサラリと描かれるが、特に妹のお猶の
エピソードには泣けた。。目が見えず身体も弱かったお猶に
逢おうとしなかった北斎の真の理由。妖気心霊入り乱れる中、
頑固で偏屈極まりない親父の愛情が娘たちに享受されるシーン。
こりゃ叶わないよな、やっぱり。と天性の才能に惚れ惚れした。
(実写でやっても良さそうな顔ぶれ。朝ドラでもいいんじゃない)