劇場公開日 2016年1月23日

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「吃驚するくらいのハッピーエンドが最高だった。」エージェント・ウルトラ lylycoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0吃驚するくらいのハッピーエンドが最高だった。

2016年9月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

そこに至るまでのストーリーやアクションはなかなかにケレンが効いている。テンポもいい。うだつのあがらない主人公が、実はCIAの実験で生まれたとんでもない戦闘能力の持ち主で…なんてオタクの妄想じみた世界観を堂々と垂れ流す清々しさといったら!

情けない役がやたらとハマるジェーシー・アイゼンバーグ。今作の主人公マイク役でもとてもいい仕事をしている。冴えないにーちゃんが無自覚なまま能力を爆発させて無双しまくる快感。投げたフライパンで弾道を曲げて死角の敵を倒す。たとえばそんなスゴ技をキメながら、肩を竦めておどけるあの感じ。

当然、オタクの妄想につきものの超絶かわいい彼女だってちゃんといる。かわいいけどちょっとワケ有りのヒロイン、フィービー役にはクリステン・スチュワート。あのキレイな顔がボコボコにされたりしてて、この監督もなかなか容赦ない。それでも女神は女神。甘えた男の妄想だと笑わば笑え。

ホームセンターの売り物やらその場にあるものを使って近接戦闘を組み立てるあたりは、デンゼル・ワシントンの『イレーサー』なんかと同趣向。ただし、ノリは極めて軽薄。スチール製のチリトリで首チョンパとか、悪趣味すぎて愛がとまらない。とにかく、ぼくの好物がいっぱい詰まってる。

ただ惜しむらくは、敵がしょぼい。ぜんぜん巨悪な感じがしない。主人公を殺しにくる戦闘員も「ウルトラ計画」の被害者らしいんだけど、そのあたりの悲壮感はもっと欲しかった。しつこく追ってくる役のラファだけでも、洗脳前の幸せそうな姿を見せるとかしていれば、あの最期の台詞で泣けたと思う。

せっかく実際にあったCIAの洗脳実験を題材にしたのなら、実録風の非人間的な実験映像をチラ見せするとか、やりようはあったはずだ。あんな小物のスタンドプレーだけじゃ、どうしたって食い足りない。あえてCIAにこだわらず、『キングスマン』のヴァレンタインみたいなイカれた敵を創造する手もあったろう。

とはいえ、そんな不満も、あの最高にバカっぽくて、最高にハッピーなラストの前には些細な問題でしかない。あのタイミング。間が悪いばかりだったマイクが、ついに最高の瞬間をつかみとる。思わず映像の中のマイクとハイタッチをキメたくなるような、文句なしのハッピーエンディング。完璧にやられた。

lylyco