「夢現」フューリー ヒカルさんの映画レビュー(感想・評価)
夢現
この大作の大半は戦闘シーンです
臨場感抜群、観終わった後、夢現…と言いますか茫然自失の状態でした
戦争モノにありがちな、兵士たちの背景(例えば年老いた母親や故郷に置いてきた妻子など)は全く描かれていません
ただひたすらシンプルに戦闘シーンが繰り返されていきます
物語はドン(ブラッドピット)率いるフューリー号に、みるからに草食系の新人ノーマンが配属される所から始まります
ドンはノーマンに「誰とも親しくなるな」と言い、嫌がる彼に無理やり敵を撃たせます
「リタイヤする」と泣き喚くノーマンでしたが、ある出来事をきっかけに一人前の戦士に変わっていく姿は本来必要のないはずの姿であり、とても切なくなります
誰とも親しくなるな、と言ったドンですが実は誰よりも仲間を愛しています
仲間が亡くなった時の苦しみを知っているからこその発言かもしれません
この映画は色々な見方が出来ると思います
純粋に戦闘シーンを楽しむ娯楽作品として観ることも出来るでしょうし、戦争の現場を知る手段にもなるでしょう
戦争を繰り返してはいけない、という分かってはいるけれど、だからこそ非常に重いメッセージが込められています
私の唯一の不満はドンが美しい顔のまま死んでいくラストシーンです
戦争の悲惨さを伝えたいならかつてドンが独兵に対してそうしたように、ドン自身が無惨に死んでいくべきだと思いました
特に若い世代の観客に「カッコ良い」と思われてはいけないのです
戦争はカッコ良くてはいけないのです
極限状態で人はどうなるのか、おそらく全ての理由を「戦争」にして敵を撃つことしか考えなくなるのだという事がよく分かります
「理想は平和だが歴史は残酷だ」