「本物のティーゲル戦車登場」フューリー Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
本物のティーゲル戦車登場
総合:80点 ( ストーリー:70点|キャスト:75点|演出:85点|ビジュアル:85点|音楽:65点 )
戦争を格好良く描くのではなく、悲惨さを強調するだけでもなく、特に戦争を知らないノーマンの目を通してありのままに戦車の戦闘の現実を描こうとしているように思える。戦争を体験した彼が現実に目覚めていく姿も良いし、とても迫力のある映像だったし、演出の質も高かった。
冒頭でアメリカ軍戦車がドイツ軍戦車に劣ると書いておきながら、なかなかドイツの優秀な戦車が登場しない。それが登場するときが物語の最後となるのかと思ったら、それは見事に外れてしまった。しかし登場したティーゲル戦車は過去の映画によくあるアメリカ軍戦車にドイツの紋章を書いただけではなく、世界で唯一の本物の稼働するティーゲル戦車が登場したのは嬉しい喜びだった。
そして結末の場面だが、いくら命令とはいえなぜここで死を覚悟して圧倒的多数の敵軍と戦うと決めたのかが疑問に残った。偵察に出たノーマンは、精鋭のSSが対戦車擲弾を多数装備しているのも見えたはず。勝ち目のなさそうな状況で、無線が壊れて援軍も期待出来ない。そもそもティーゲルとの戦闘でそうじゃなくても戦力不足になり、その時点で計画は破綻しているのにどうして戦闘をしたのだろうか。
そして戦力差がありながらもドイツ軍はせっかく多数装備されている対戦車擲弾をなかなか使うこともなく、フューリーはしぶとく夜まで生き残るのも不自然だった。まるで映画のためにわざと勝てる戦いをせず、わざわざ対戦車擲弾を使うのを躊躇ったのではないかと思えた。脚本には不自然さがあった。
映像は全体に良いのだが、大きな欠陥としてはやたらと弾丸と砲弾の光跡が見えること。曳光弾ならば現実に見えるが、徹甲弾ですら砲弾の飛ぶ光が見えるのは映画のためとはいえやりすぎで現実感がなくなる。