「仏映画特有の、万人に媚びない作り」イヴ・サンローラン ルナルナさんの映画レビュー(感想・評価)
仏映画特有の、万人に媚びない作り
2011年のカンヌ映画祭で「ツリー・オブ・ライフ」がパルムドールを獲った時、人々はこぞって映画館に足を運んだが、あまりに難解で、日本人には理解しがたい映画だった。それに賞を与えるフランスの感覚。
まさにこの映画も、いかにもフランス的。
イヴ・サンローランの私生活に焦点をあてた伝記映画だが、取り立てたストーリーやテーマは無い。事実を描写し、複雑な人間関係や様々なゴシップも、セリフのやりとりや出来事だけで見せる。コクトーなどの大物芸術家も登場するが、一切の説明を挟まず、マスコミの報道も流さない。
あくまでサンローランの側から私生活を暴き、早熟な天才デザイナーの、愛と、苦悩と、孤独を淡々と描いている。そこから何を感じるかは、観る人次第といった体(てい)。ある意味、エゴイスティックで、ナルシスティックな映画だ。
それでも、サンローランを研究し尽くしたという、主演のピエール・ニネの立ち居振る舞い、仕草、しゃべり方には魅了されるし、冒頭で登場した遺品の仏像を衝動買いするシーンや、若かりし日、デッサンを描く彼の背中から映し出し、ラスト、主なきデスクで終わるなど、細やかな演出が散りばめられいて、心憎い。
観た直後より、日にちが経つほど、じわじわと魅せられる作品。私的には、結構好きである。
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