「おばさんのレシピ。」めぐり逢わせのお弁当 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
おばさんのレシピ。
このタイトルからお弁当を介した男女のロマコメだろうと
勝手に想像していたら、洗練された大人の物語だった。
(ちなみに歌はあるが踊りはなく、ミュージカルでもない)
お弁当ブームは日本だけかと思っていたら違うらしい。
インドではダッバーワーラー(弁当配達人)という業者が
家庭で作りたてのお弁当を学校やオフィスに届けてくれる。
自転車やバイクに弁当を括りつけて運ぶ様子を見ていると、
これで誤配がないとは信じられないが、実際正確だそうだ。
主婦のイラは夫の愛情を取り戻そうと弁当作りに精を出す。
結婚したいならまず胃袋を掴め。なんて日本でも言うけど、
美味い料理を作れる女性は決して当たり前には存在しない。
先日観た「マダム・イン~」でもそうだったが、一昔前の
日本家庭を観ているようだった。専業主婦の妻が作る料理
など当たり前と見下し、家庭より仕事と愛人が第一の夫。
今作でもお役所仕事のリアルを巧く描いて、通勤電車内の
混雑ぶりや席の譲り合いなど本当に日本とソックリである。
これで親近感が湧かないはずがない。(煩い新人もGood!)
もう一人の主役が階上に住むイラのおばさん。この叔母は、
最初から最後まで声のみの登場で姿は一切見せない。が、
何たる存在感!弁当の具材や調理法、夫の気持ちをイラが
取り戻すまでのノウハウを煩いほど上からまくし立てる^^;
しかし叔母にも辛い現実がある。天井の扇風機を止めない
エピソードは涙線に効く。お節介やら勘違いやらが招いた
不思議なめぐり逢いとその後のエピソードなのだが、男側
から観てもおそらく共感度大。其々の立場で其々の考えを
汲み取りつつ、想像を膨らませるラストへ話は流れてゆく。
(お弁当が美味しそう。私はバナナとリンゴだけなんてやだよ)