劇場公開日 2014年8月9日

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「寂しい現代人のSNS」めぐり逢わせのお弁当 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0寂しい現代人のSNS

2020年6月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

今から40年も前のこと、
僕は高校の物理教室の机に落書きを始めた、
【ラブ♡DESK会】という“掲示板”だ。
小さな呟きに誰かが答え、誰かの悩みに誰かが答える。
美味しいかき氷のお店を紹介すれば、ごちそうさまが返ってくる。
いつもその席に座る他所のクラスの知らない誰かが、言葉を残す。その鉛筆文字のチャットは、驚きと共感と空想の中の友だちの語りかけだった。
1年間続いた愉快な落書き掲示板だった。

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「めぐり合わせのお弁当」
弁当箱に潜ませる小さなメモが、イラとサージャンの心の隙間を埋める。

人は、寂しさにふと話し相手を求める。
言葉を交わして思いを伝えたい相手を人は求める。
そして人はその相手からの返事をひたすら待っている。

SNS全盛の時代だ。
対話不在の人生に迷い、誰でも良いから宙に向かって投げた言葉に、見ず知らずの誰かが答えてくれる。
スマホが、誰かとつながった瞬間をチャイムで教えてくれる。心の中に希望のイルミネーションが灯る、
それがたまらなく嬉しい。

たとえそれが危険な匂いを放っていたとしても、野獣の罠であったとしても、
遠くの親戚より近くの他人を、寂しい現代人は受け入れてしまう。
SNSは、寂しさの時代の代償なのだ。

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・「人は時々、間違えた電車でも正しい場所に着く」
⇒孤児だと言う新人シャイクが、いないはずの母の教えを語る。
・「このレシピなら夫は必ず振り返る」
⇒階上のアンティはそう断言する。
・「弁当が間違うはずはない」
⇒配達人は全く耳を貸そうともしない。
正解と不正解を分かたずにインドを貫く悠久のガンジス、
そして母親が生きているのか死んでしまったのか、そこが曖昧であったとしても生死の境界が突き詰められることもない。命の輪廻に逆らわずに生きる、かようにして人間の世を処する住民たちのそんな生きざまがたくましい。

⇔ 返事をしない夫と暮らすよりも階上のおばさんやサージャンとの文通のほうがイラの心を支えてくれる。
生きた言葉が人を生かすのだ。

手紙の相手に会いたくなる男女、
「間違った電車云々」の言葉に俄然背中を押されてイラに会いに行こうとしたサージャンであったが
自らの放つ加齢臭に出鼻を挫かれて意気消沈してしまうあのシーンは、わかるなぁ。
言い様のない共感でした(笑)

イラに禁煙を勧められてベランダでタバコを我慢するサージャンも、可愛いんです。
恋です。

サージャン役のイルファン・カーンが4月日29に亡くなりましたね。
ブータンに旅立ってしまったイラと、冥土に旅立ってしまったサージャンは、いつか何処かで会えたのだろうか。

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3国共同制作。
ドイツは物語の精神性と骨格の確かさを、
フランスは会話の洒脱と不条理な結果を、
そしてインドは熱き人間への限りなき希望を。
それぞれの製作者が精魂込めて持ち寄るとこんなものが出来た。
とにかくこんなに内容の濃い映画って、あまりないと思う。
脚本・編集は超人的。

きりん
NOBUさんのコメント
2023年2月20日

今晩は。
 きりんさん、あのお弁当箱を購入されたのですか!
 私は今作を劇場で見たのはもう9年前になりますが、可なり細部まで覚えています。
 一番驚いたのは、私の会社は物流も手掛けている事もありますが、夫が会社に行った後に、奥さんが作ったお弁当が昼には届けられるシステムです。
 当時、”あのシステムを調べてくれい!!”と言って働く仲間達から”又かい・・。”とげんなりされた事を思い出します。人力であのシステムを回すのは相当凄いと思いましたね。そういえば近作の「エンドロールの続き」でも、マサイ少年のお母さんが手際よくチャチャっと南インド料理を作って入れて上げたお弁当箱もあの筒状の形でしたね。お弁当の蓋を開ける瞬間のワクワク感は暫く体験してないなあ・・・。では。

NOBU
コンブさんのコメント
2020年6月3日

同感🙆

私事ですが、、
お昼はお弁当(愛妻弁当)です😅
感謝です😂

コンブ
NOBUさんのコメント
2020年6月3日

おはようございます。

"生きた言葉が人を生かす。"素晴らしい言葉ですね。
イルファンカーンさんの訃報は知らなかった・・・。
マサラムービー系ではない映画で存在感を発揮されていた方だったので、残念ですね。
では、又。

NOBU