フットノートのレビュー・感想・評価
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父・エリエゼルの文献学者としての高い、高い、高い矜持
文献学という、とてもとてもストイックな分野を自分の専門分野として研究に没頭する父・エリエゼル-。 その父は、条イスラエル賞の受賞インタビューに訪れた記者に、息子・ウリエルを酷評して見せるのですけれども。 しかし、それは本当に、息子・ウリエルの文献学者としての才能を否定したものではなかったのでは、ないでしょうか。 むしろ、自分が受賞に値する研究的な業績を挙げ得ていないこと、つまり自分が(権威ある?)イスラエル賞の受賞対象者として相応しくないことに、否、むしろ息子・ウリエルこそが受賞に相応しい研究業績を挙げていることは、父は自覚していた-と受け止めても、決して根拠のない深読みではないと思います。 つまり、父・エリエゼルは、早くから受賞の連絡は「シュコルニク教授」違いであったことに既に気づき、そして得心(納得)もしていたのではないかと思えてなりません。 評論子は。 そして(それにも関わらず?、なおも)父・エリエゼルの研究者としての名誉・体面を重んじてあげようとする息子・ウリエルの温かさ。 父・エリエゼルは、受けた通知のとおりに、イスラエル賞の受賞会場にまで歩は進めたのですけれども。 実際、審査講評の、ほんの些細な言い回しに違和感を覚え、それが審査委員長であるグロスマンの筆になるものではなく、むしろ息子・ウリエルの手になるものであることを喝破(かっぱ)していたと思われるところは、いかにも、エリエゼルの文献学者らしいところと言うべきでしょうか。 「ミスがないか、入念に確認する」「訂正が書き込めるよう、余白を用意しておく」 常に誤りに備えて余白を用意しておくという、飽くまでも慎重な「文献学者らしさ」が、そこに伏在しているように思えてなりません。 ときに、「脚注」というほどの意味のようですね。本作の題名は。 恩師である著名な宗教学者・ファインシュタインに、脚注で賛辞を贈られたことだけが、文献学に生涯を捧げた父・エリエゼルの学問的な唯一の功績。 多作のウリエルが、研究者として自分を乗り越えてくれたことに、父・エリエゼルは、その無表情の陰に密かな愉悦を噛み締めていた-とまで言っても、穿(うが)ち過ぎではないと、評論子は思います。 そして、そこに、文献学者としてのエリエゼルの高い、高い、高い矜持を見て取ることができた本作は、充分に秀作としての評価に値する一本であったとも思います。 (追記) 本作は、リメイク別作品『ふたりのマエストロ』(2022年、監督:ブリュノ・シュシュ)の元作ということで鑑賞しました。 いわば「ふり返り」での鑑賞でしたけれども。 結果としては、リメイク作が及ばない作品を観ることができ、嬉しくも思います。
コメディーみたい。
イスラエルのヘブライ大学で教えている親子(父と息子)。息子は有名でカリスマ的な教授。でも父親は頑固で教え方も古いさえない教授。イスラエル賞(イスラエルの文化人にあげる賞)が果たしてどちらに行くかという心理描写のよくできている映画。
なんとも不思議な…
イスラエルが好きだもので、これはと観てみましたが… 同じ仕事に従事する、息子と父親の複雑な心情が、こまか~く巧みな演出で見事に表現されています。 が、テンションが一貫していないので、イマイチのめりこめない。 コミカルにもってきたいのか、掴みどころなくぼんやりとさせたいのか、どっちかにしてほしかった。 それも含めて、珍しい作風に仕上がってるけども…。
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