「人生経験によって伝わり方が違ってくる作品」悼む人 yujiさんの映画レビュー(感想・評価)
人生経験によって伝わり方が違ってくる作品
「10年後にまた観たい作品NO.1」
坂築静人(悼む人)
全く自分とは関係ない人に対し、その人が誰を愛し、誰から愛されていたかを知り、またはイメージをして思うことにより、確かにその人がこの世に生きていたことを心に留める・・・最初観る前は、宗教かと疑った目で観ていたが、彼が友人の死という不幸に遭遇し、また、その友人の死を忘れている自分に深く絶望し、死に対し、どう向き合うかで自分を取り戻していくという「悼む旅」の経緯を知ることで、悼む人に共感することが出来た。これは、私も似たような経験をしたことがあるから理解できた。人には、悲しい出来事や辛い過去を忘れるという素晴らしい能力を持っている。それは、その人が、辛い過去を乗り越え、未来に向かって生きていく上で、必要な能力なのに、人によっては、時にそれが、あんなに大切に思っていたことを自分はこんなにも簡単に忘れることが出来るのかと自己嫌悪に陥り、深く自分を傷つけてしまう逆効果なものにもなってしまうことがある。それは、人によって考え方や育ってきた環境があるからそれも含めて個性であり、人生観なのだということを経験を通して私は知っている。
この「悼む人」をあなたの目にはどう映っているか。
これこそがこの作品のテーマであり、理解できるかできないかでこの作品の評価は変わってくると思う。そういった意味では、万人受けする映画ではないし、観る人に委ねられている為、置き去りにされてしまう人も出てきてしまうと思う。
ただ、「観る人がどう受け取るか」・・・それこそが映画の面白さであり、人間の面白さでもあると私はこの作品を通して改めて感じることが出来た。
冒頭の「10年後にまた観たい作品NO.1」と書いたのは、また新たな人生経験を積むことで違った見方ができるのではないという期待と、まだ理解できてない登場人物(甲水朔也の思想は未だ理解できず)のことも理解したいと思う気持ちがある為。
まだまだこの作品は、深いと感じる作品だと私は思います。
原作も読んでみたいと思います。