「“生きる”ということは狂気⁉︎」悼む人 aoikaze0513さんの映画レビュー(感想・評価)
“生きる”ということは狂気⁉︎
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見ず知らずの亡くなった人たちを悼むために巡礼の旅をする静人(高良健吾)。悼む行為である「天に手をさしのばし、地を掬うパフォーマンス」は、いったい何のために、誰のためになされてるのか? 家族以外の周囲の人には静人自身が言うように“ビョーキ”のようにしか理解してもらえない。
共に旅することになった夫殺害の奈義(石田ゆり子)のその夫 甲水(井浦新)の狂気も理解しがたい。
特異的な静人や甲水でなくとも、死は誰にでも常に背中合わせにあるもので、必死に生きようとすればするほど、誰しも生きることそのものが狂気の沙汰になるのかもしれない。
甲水と静人が対峙するところは哲学的でもあり深く考えさせられた。また視覚を失った蒔野(椎名桔平)と静人の終末期にある母親坂築巡子(大竹しのぶ)との会話にはこの作品の重いテーマのヒントがあるようで、観る側ひとりひとりの胸に問いかけ、突き刺さってくるかのよう。ずっしりと響いてくる。
実力派の俳優陣が勢ぞろいで、脇役といえどもそれぞれの登場人物のこれまでの人生までもが浮かんでくるほどの一挙手一投足が細やかに演じられていて圧巻。
何より甲水を演じる井浦新さんの狂気の演技は背筋も凍るほどで…。
自然の風景の中で悼む静人の姿や回想場面の幻想的な演出も効いてました。
衝撃的な天童荒太さんの原作+堤幸彦監督の世界観が素晴らしかったです。
原作は直木賞受賞作品ですが未読。
ふと思いたって観た映画ですが、しばらく余韻に浸っていろいろ深く重く考えさせられることになりそうです。
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