劇場公開日 2025年4月18日

「1990年代半ば、あの頃の台北の空気」カップルズ バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 1990年代半ば、あの頃の台北の空気

2025年8月15日
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鑑賞方法:映画館

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4Kレストア版で再観賞。多様な国籍の人々が集い、空前の経済的繁栄を誇る1990年代半ばの台北。身を寄せ合うように4人でつるんで金儲けと女遊びと享楽に狂奔するドロップアウトした若者たちの前に、イギリス人の恋人を追いかけてきた美しいフランス人女性が現れる。リーダーは彼女を利用して一儲けを企み、新入りの若者は彼女に惹かれていく。そしてそれが彼らの間に亀裂を生み、やがて全ての歯車が狂っていく彼ら4人それぞれの逡巡や破滅や希望を、彼らを取り巻く多彩な人々を交えて描いた青春群像劇である。

うーん、懐かしい。それでいて今でもちっとも古びていない。90年代半ばの台北という大都会の風景や空気がそのままに切り取られている。そしてそこで刹那的に生きる若者たちの青春が崩壊していく様を残酷なまでに描き出したストーリーが素晴らしい。若いエリート社会人たちが主人公だった前作『エドワード・ヤンの恋愛時代』よりも年下のアウトサイダーな若者たちの世界を描き出しつつ、そんな若者たちまでもが金に取り憑かれ誰もが勝者になろうと血眼になっている高度資本主義社会に対するクールで鋭い批判の目が向けられていることに今なら気づく。そんな台湾版バブル経済は1997年のアジア通貨危機によって終わりを告げるのだが、この映画が公開された時点では当然ながらエドワード・ヤンも含めてまだ誰もそんなことを知る由もないわけで。その一方で、現在と変わりない光景の映画の中でも、今なら携帯電話やインターネットが存在するからこういう展開にはならないよなと思っちゃう部分が散見されるところにはちょっと時代を感じたりもした。だが同時に「都会の孤独」という作品の背後にある問題は時代を問わず洋の東西を問わず永遠のテーマだろう。

それにしてもヒロイン役のフランス女優ヴィルジニー・ルドワイヤンは今見るとというか今見てもすごい美少女。最初に観た1996年にはそこまで思わなかったのが自分でも不思議だ。台湾の金持ちの娘役のアイビー・チェンも美少女だと思ったが、この映画の後まもなく女優を辞めて米国に留学し、写真家になって日本映画にもスチールとして多数参加したらしい(幼少の頃、日本に住んでいたそうだ)。そして主人公4人のうち3人までがヤンの前々作『牯嶺街少年殺人事件』の出演俳優で、うち1人が今でも国際派スターとして活躍するチャン・チェンである。

『恋愛時代』に比べるとさすがにちょっとだけ落ちるが、それでも非常に面白かった。そしてとても懐かしい。

バラージ
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