「メッキ」カップルズ 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
メッキ
台北の空は晴れ渡るということがない
『ミレニアム・マンボ』然り『青春神話』然り 空は輪郭線を失っているか霧で霞んでいる
非行と性交とメイクマネーだけがそこから逃れるためのExit のような気がする 気がするだけで本当はどこにも行けない
インダストリアルな街並みをタクシーや原付に混じってグルグルと永遠に廻り続けているだけ
若者たちは亜熱帯の喧騒から完全に遮断されたブリティッシュカフェに辿り着く それは必然だ
"HardRockCafe"と刻印されたメッキ板を踏み抜いた瞬間に始まる恋は 永遠の横滑りの外側へと自分を連れ出してくれるような錯覚を青年に喚起する
ただそれがメッキであることを見落としてはならない
青春とは根拠のない全能感が崩壊を迎えるまでのプロセスである と断言できる
何でもできる という露悪だけが互いを繋ぐ紐帯であることを暴かれた若者たちの絆は 本物の悪を前に呆気なく千切れていく
嘘が上手い 親に金がある 顔立ちが優れている 英語が喋れる その程度では悪が蔓延る台北の夜を生き延びられない
青年が恋したフランス人の女はいつまでも異国情緒というフィクションに浸り続ける 彼女が想いを寄せるイギリス人実業家にしても 台湾のことをせいぜい投機にしか捉えていない 台湾の街並みを眼差す彼らの視線の先にはそれを包括し 支配する西洋の影が常にある
それでも最後にマルトはイギリス人実業家に見切りをつける
繁華街の真ん中で青年と落ち合い 二人は人目も憚らずに熱い接吻を交わす それは一見すると搾取国と非搾取国の間に平等がもたらされたことを象徴しているようにみえる
しかしもう一度言おう
この恋はメッキから始まったのだ
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。