「世紀末の台北は 「台北サラダボウル」 そんな街を漂流する若者たちの行き着く先は」カップルズ Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)
世紀末の台北は 「台北サラダボウル」 そんな街を漂流する若者たちの行き着く先は
原題は”麻將 Mahjong” 4人が卓を囲んでやるあのゲームです。本篇中に実際にマージャンを打ってるシーンは後半に端役に近い4人が卓を囲んでいるのが数秒あるだけですが(中華文化圏外の出身と思われる人がメンツに入っていて「国際マージャン」の様相を呈していました)、ヤン監督は4人というのにはこだわってるような感じです。物語の中心にいる、台北を漂流している感じのギャングもどきの若者たち(少年たちと呼んだほうがいいかも)はそれぞれレッドフィッシュ、ホンコン、トゥースペイスト、ルンルンと呼ばれている4人組ですし、また、拉致した側2人とされた側2人の計4人とか男1人をからかう女3人組で計4人とかの4人で1シーンの画面作りをしている場面も多いです。特に序盤のカフェバーみたいなところで国籍がバラバラな4人がテーブルについておしゃべりしているシーンはテーブルの形が真四角なこともあり、多国籍マージャン大会のよう。世界からいろいろな人々が欲につられて集まってくるサラダボウルのような台北での生存競争は、自分の手についての構想を練ったり、ライバルの手の内を読んだり、はたまた機先を制するためにリーチをかけたりするマージャンのようだということなのでしょうか。
さて、ギャングもどきの4人組なのですが、ヘタなマージャンの打ち手が危険牌をどんどん切っていくみたいな感じのかなり危なっかしい世渡りをしております。4人の中では物語上での役割が古典的かつ明確なふたり、すなわち二枚目/色男の役回りのホンコン、トリックスターの役回りのトゥースペイストですが、それ以外のふたり、レッドフィッシュとルンルンを中心として話が進んでゆきます。レッドフィッシュは4人の中ではリーダー格で、人間には2種類しかいない、それは悪党とバカだという信条のもと、自分は悪党でバカを搾取する側だと思っているフシがありますが、客観的に見れば悪党よりもバカ寄りな感じで、成功−没落のローラーコースターのような人生を歩んできた父親との関係も微妙です。ルンルンは4人の中では新入りでレッドフィッシュに通訳兼運転手として便利屋扱いされていたのですが、台北に流れ着いたフランス人女性のマルトが4人の前に現れると仲間との関係が微妙になってゆきます。
そんなこんなでストーリーが展開されてゆくわけですが、登場人物たちは総じて根なし草的で漂流感が半端ないです。地に足がついておらず、ただ台北のもつ妖しい磁力のようなものだけで街に引き寄せられてる感じです。
それにしても、物語序盤に「台北は恋が実る街じゃない」という意味深なセリフを入れ、レッドフィッシュの父親のあの件で、台北で恋を実らせるというのはつまりこういうことなんだよと示しながらも、ラストにあれを持ってくるなんて、まるでカラカラに乾いた砂漠のその先にオアシスが現れたみたいじゃないですか、人が悪いな、ヤンさん、ずるいよ(褒めてます)。まあでも、そのオアシスも蜃気楼のように消えてなくなることもあるわけで。そんな儚い漂流感を含んだ空気が流れる中、20世紀末の台北の夜は妖しく更けていったのでした。
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