ショート・タームのレビュー・感想・評価
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メイソンがいいやつ過ぎないか?
両親ともまっとうでちゃんと愛情を注がれた私からすると、なんでそんなに反発するのかい?と思っちゃうけど、それほど親からの愛って大事なんでしょうね。メイソンも実の親と暮らせてない子供時代だったようだけどそれでもあんなに優しい人になったのは里親の力ってことなのかな。実際にはそんなに心に闇を抱えた人が、子どもの保護施設で働いてるのってちょっと心配と思ってしまうけど、まあそこは他人が口を出すところではないですね、そもそも映画だし。マーカスのエピソードでささやかなハッピーエンドになるのもとても後味良しでした。
冒頭で走り出す少年、この伏線回収好きかも
どことなく胸がフワッと温かくなりつつも、誰かが幸せを手にしたりもしない、ハッピーエンドでもない結末。絶妙なバランスで好みでした。 ブリー・ラーソンの演技は素晴らしかった。幸薄そうな配役はハマる感じに思える。
ある映画に触発されたのではないかと推察
この映画で、癒された人がどれほどいるのかと思うと、申し訳ない限りですが、私には理解できませんでした。もちろん、ハートウォーミングないいお話だとは思います。タコのニーナのおとぎ話は、それだけを短編のアニメーションにしても通用するほどに優れたエピソードで、泣きながら少女が語るシーンはこの映画の白眉と言っていいと思います。 ただ、映画全体を覆う重苦しい空気と閉塞感が、何とも言えない「閉じられた」世界を想像させ、この日常が子供たちにとっていい影響になるとは思えない環境です。 ただの一例でいいから、この施設から旅立っていった成功者のエピソードを取り上げてほしかった。もちろん事実に忠実に映画化したのなら外ならず、映画という、90分の人生体験を期待する人にとって、この映画が、観客をどこへ連れていこうとするのか、よく解らないままラストシーンを迎えました。 そういう意味で、メイソンが語る出来事、カフェで偶然会ったこの施設出身の男の子に挨拶をした話を、なぜきちんとドラマにしなかったのか疑問です。心温まるいい話を切り離すような奇声を上げ、やせっぽちの少年が白昼堂々と脱走を企てます。 少年は、キャプテンアメリカを気取り、星条旗をマントのようにまとい、奇声を発しながらタッチダウン(施設の外に脱走)を狙います。それは、まるで予定調和の鬼ごっこのようにも映り、現にもう一歩のところで、少年は向きを変え、追いかけてくる保護管に向かって突撃しようとします。その楽しそうな表情は、彼らの日常が自己実現欲求を満たすための開放を表しているのでしょう。 冒頭のシーンをかぶせて、同じシチュエーションで締めくくるテクニックが使われていますが、冒頭のシーンは、入所して一日目の同僚をリラックスさせる「すべらない話」で打ち解けようとさせる保護管を一気に緊張の極致に導き、彼らの過酷な仕事ぶりと、施設に入っている子供たちの極限状況をいっぺんに見せます。このスタートとラストの対比こそが、脚本家の一番の狙いなのだと思います。 問題児ばかり揃っている施設の中で、自らが父親による性的虐待を受けた経験のあるグレイスが、同じ境遇の少女に共感し、とんでもない行動に出る様はエキセントリックで、どこかの何かのドラマで見た気になる既視感があります。 特に「世界にひとつのプレイブック」は、この映画の直前に公開され、高い評価を得たので、何らかの影響は受けていると思われます。 2017.11.29
【”子は親を選べない。だが、親からの虐待により傷ついた心を、大切な人との繋がりにより癒す過程を描いた物語。”特に、再後半は心に沁みるヒューマンストーリーである。】
ー 親からの虐待、ネグレクトにより傷ついた心を持つ子供たちのための短期保護施設施設「ショートターム12」。 そこで働くグレイス(ブリー・ラーソン)と、同僚でボーイフレンドのメイソン。(ジョン・ギャラガー・Jr) 子供ができたことをきっかけにふたりの将来は幸せなものになるかと思われたが、グレイスは誰にも打ち明けられない心の闇を抱えており、メイソンに子供は産めない・・、と伝えてしまう。ー ◆感想<Caution! 内容に触れています。> ・今作には傷ついた心を持った10代の子供たちが多数出演しているが、特に印象的なのは母親に虐待された故に嫌悪するマーカス、そして父親に虐待されて入所して来たジェイデンが印象的である。 ・出所が近いマーカスが母親への憎しみをラップに乗せて歌うシーンと、ラップの歌詞。 - けれど、彼はその後立派に更生した事がメイソンにより語られる。- ・ジェイデンがグレイスに語ったタコのミーナとサメの話。 - ”君の脚を一本くれよ・・。お腹が減ったからもう一本。全部くれよ・・。” 父親からの虐待を暗喩している。そして、ジェイデンが心優しき女の子である事も・・。- ・短期保護施設施設「ショートターム12」で働くグレイスも、父親からの虐待を誰にも言えずにいた。刑務所に入っていた父親が仮出所すると聞いたグレイス。 そして、恋人のメイソン(良い奴である。)の子供を身籠った時に言ってしまった言葉。 ”生まない・・。” - 親から虐待された子供の中には、自分も子供を虐待するのでは・・、という思いを持つ子がいるという・・。- <ジェイデンが、父親に家に戻ったと聞いたグレイスが所長を怒鳴りつけ、バットを持ってジェイデンの家に自転車で駆け付けるシーン。ジェイデンは無事だったが・・。 そして、二人は夜中、ジェイデンの父親の車をバットで叩き割る。 両親による子供の虐待はコロナ禍も影響し、増えているという。 私には、自分の子供を躾と称して、虐待する人間の気持ちは全く理解出来ないのであるが、今作のラスト、グレイスが過去の忌まわしき出来事をジェイデンと共に打ち砕き、メイソンとの子を持つ決断をするシーンと、彼女のお腹にいる子供の姿を二人で喜びながら、モニターで見るシーンは沁みたなあ・・。
優しさで溢れ感情が込み上げる
Amazonプライムで配信終了間近のリストからなんとなく良さげな雰囲気で気になったので鑑賞。 うわっ!出ました掘り出し物!これは文句の言いようがない傑作だな。いや傑作とはちょっと違う。名作、ともなんか違う。 分かる人は分かると思うけど、「傑作」とも「名作」とも違う、いい映画ってありません?特に、ミニシアター系の映画とか、画面設計が綺麗なアート作品に多い。 「傑作」とかありきたりな表現は極力使いたくないんだけど頭がかたいから許して下さい。 とりあえずエモーショナルな素晴らしい作品です。(素晴らしいって表現もあんま好きじゃないんだよな…) 素晴らしい作品に出会うと当然「これ監督誰だ?」と思う訳ですよ。 調べてみたら『黒い司法』のデスティン・ダニエル・クレットン監督だと発見。『黒い司法』も心にズシンとのしかかるテーマを浮き彫りにしつつ感動的な演出が光る作品だった。 個人的にはスパイク・リー作品によくある黒人のノリが、差別とかでは無く単純に自分の感性と合わないのであまり好きでは無い。 でも『黒い司法』では黒人のノリを嫌うどころか、感動してしまった。 これは今作でも共通している、というか今作の方が色濃く出ていることなんだけど、クレットン監督は人間の撮り方が上手い。 瞳の奥にある優しさを上手く捉えていて、当時人物みんなが愛おしく感じてしまうし、心を強く揺さぶられる。 ドキュメンタリー調な作風も相まって、リアルタイムな社会派テーマをリアリティ溢れる映像で描ききる。 聞けばマーベル新作、『シャン・チー』の監督を務めるらしい。 同じくドキュメンタリー調な作風で魂を揺さぶる才能、クロエ・ジャオもマーベル新作『エターナルズ』を監督するし。 新マーベルシリーズは一体どうなるのだろうか?ハリウッド映画という立場に負けず、アート作品としてのヒーロー映画という新境地を切り開いて欲しい。 …と話が脱線しましたが文句なしの大傑作なので是非皆さん、観て下さい、というか観て! マストで観るべき。
凄い才能の監督だ!
ブリー・ラーソンが出てる、ということ以外の予備知識無く見た。 しかし、最初から不安になる。 冒頭で「ゴール」が示されないから。 (ほとんどの映画では、冒頭に「ゴール」が示される。典型的な例で言えば、犯人逮捕や恋愛成就など‥) そんな不安がありながらもすぐにこの作品に入り込める。 それは、役者の演技や巧みな演出により、登場人物たちの心情や葛藤に共感できるから。 凄い才能の監督が現れた、と思ったら、この後、「黒い司法」の監督をやってるんですね。 ブリー・ラーソンはブレイク後もこの監督とのコラボは続けており、それは両者に強い信頼関係があるからだろう。
ラミマリックを活かしきってないのが残念
脚本上、児童養護施設の児童とスタッフという一般的関係性に、ラミマリック演じる学生がインターンで来るっていう特殊性を活かし放題なはずなのに、さほど描かれないのが残念。 部外者との化学反応で、何か変化や成長が組織的にも個人的にも訪れるっていうのがこういう映画の王道なのに。
YOU ふっきっちゃいなよ。
かなり重たいテーマを扱ってるのに、見終わった気持ちはすごく爽やか。 ある種の無敵感というか、いつだって理想の自分になれるんだっていう希望というか。 最後に語られるマーカスのエピソードがすごくキラキラしてるし、 サミーが星条旗をマントにしてるのも微笑ましかった。 全体としては良くも悪くも主人公のグレイスに焦点を限定してるので、 それで見る人を選ぶ部分はあるかも。 でも過去のトラウマに囚われているひとにも、 今でっかい壁にぶち当たっているひとにも、 すごくポジティブなメッセージは伝わるんじゃないかと思う。 これまでの人生で自分がしてきた決断というか、選択してきたことというか とにかく、なんやかんやあってもここまで生きてきた自分を褒めようぜっていう。 誰かと比べることなんて、マジで意味ないんだっていう。 同時期に見た「パターソン」を絶賛している人が多かったけど、 僕はこっちの方が断然すき。
『癒し』は『信じること』に必ずしも発展しない
心に傷を抱える子供達がテーマなのでそもそも重い。 短期施設(ショート・ターム)で友達が出来、やがて家族のような絆で結ばれ、時に確実に癒やしを感じる瞬間があるんだけれども、それが決して「人を信じる事」に結びつかず、光があるから陰があるのだというように嬉しく思う瞬間に自分の心の傷を再確認し、やりきれない思いで暴走?に走る子供達の行為が辛い。 施設に入る子だけでなく、彼らを迎え入れる職員達も同様に傷を持っていて、同じ境遇の存在によってまた自分も揺れたり、勇気付けられたり。 人それぞれ辛さを訴えかける表現方法もバラバラで、それにアンテナを高く持って対応していける人(親)にならなければと思った。
10代の少年少女を対象とした短期保護施設を舞台に、誰にも言えない心...
10代の少年少女を対象とした短期保護施設を舞台に、誰にも言えない心の傷を抱えた女性と子どもたちが、大切な誰かとともに生きる喜びや希望を見出していく姿を描いたヒューマンドラマ。
癒す人も傷ついている
問題を抱えたティーンエイジャーが暮らす(ショート・ターム21〉を舞台にしたドラマ。 親の虐待、肉親の死で心を病んだり、収容されている少年少女の事情も様々だが、彼らの世話をするスタッフもまた過去に問題を抱えていた。 若きケアマネージャーであるグレイスもまたその一人。 妊娠、かつての自分を思い出させる少女ジェイデンの入所で、彼女の心も不安定になる。 自分が経験者だからこそ寄り添えるというのも事実だが、彼らに対する度に過去の記憶が蘇り、傷口が開きそうになるのも確かだ。 この施設では基本的に入所期間は1年未満とされていて、スタッフが彼らに関わるのはほんの短い期間で、施設を出た後の彼らをずっと見守って行けるわけではない。 でも、その期間の中で精一杯寄り添い、なるべく前向きな姿勢で送り出す、きっとどこの国の同じような施設でもスタッフの思いは同じなんじゃないかと思う。 未だに虐待による心の傷を抱えているグレースに対し、同じスタッフで恋人でもあるメイソンは愛情溢れる里親に育てられ、危機に陥るグレイスを支える。 そのメイソンが冒頭で新人スタッフネイトに語る収容者の少年のエピソードとラストのマーカスのエピソードが対をなす円環構造になっている。 ブリー・ラーソンの出世作であり、今ではブリー・ラーソン、ラミ・マレックという二人のオスカー俳優を輩出したが、個人的にとても印象に残ったのは、18歳になり退所を控えたマーカスを演じたキース・スタンフィールドだ。 彼が母親への想いをラップのリリックで表現するシーン、髪を剃って母親から受けた暴力の跡がないか確かめるシーンには泣かされた。 彼は今作に出演後、『グローリー/明日への行進』『ストレイト・アウタ・コンプトン』『ゲット・アウト』等話題作に出演、確実にキャリアを伸ばしている。
打ち明けて、寄り添い合って、希望と未来を
偶然にもブリー・ラーソン主演作を続けて鑑賞。 こちらは『ルーム』でオスカーを受賞する前に注目を集めた2013年の作品。 問題を抱えるティーンエイジャーをケアするグループホーム“ショート・ターム12”。 そこで働くケアマネージャーのヒロインと、彼女を取り巻く同僚、少年少女たちとの人間模様。 心の傷を癒すハートフル作品にも出来るが、非常にシリアス。所々重く、生々しく、痛々しくもある。 精神疾患、自傷行為、DV…少年少女たちが各々抱える問題は、見ていて時に辛くなるほど。 ハリウッド映画でよく描かれるティーンエイジャーはお気楽能天気が多いが、無論全員がそうじゃない。 未来ある彼らをどうか、再出発させたい…。 しかしそれには、辛くもあるが、過去と向き合わせなければならない。 必ず彼らは、辛さをバネにし、乗り越える事が出来る…。 彼らをケアする側のヒロインも実はある問題を抱えている。 同僚の恋人の子を身籠り、中絶を考えている。…と、もう一つ。新しく入ってきた少女に昔の自分を重ね、打ち明ける…。 一人で抱え込んでいたら何も治らない。 話す事、打ち明ける事。 ここにはその問題を白い目で見る輩なんて居やしない。 寧ろ、手を差し伸べ、寄り添ってくれる。 同じ境遇の者が居たら、より親身になってくれる。 もう一人で苦しむ事は無いのだ。 実体験を基にした監督の演出と脚本は、心に傷を持つ者たちの触れ合いを、丁寧に掬い取っている。 ブリー・ラーソンが見事な演技。スーパーヒーロー役もいいが、本作や『ルーム』など、若手実力派と評価される高い演技力を存分に発揮。 キャスト面の注目に、ラミ・マレックの姿が。後の若きオスカー俳優が二人、今見るとお宝発見気分。 開幕シーンとラストシーンは似たようなシーン。 スタッフ同士で他愛ない話をしてると、突然少年が飛び出し、捕まえに走る。 でも、心情はまるで違う。 開幕シーンは大変な職場だと感じるが、ラストシーンは、一人一人と全力で向き合い、問題も乗り越え、希望と未来を感じさせる。
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