ショート・タームのレビュー・感想・評価
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凄い才能の監督だ!
ブリー・ラーソンが出てる、ということ以外の予備知識無く見た。
しかし、最初から不安になる。
冒頭で「ゴール」が示されないから。
(ほとんどの映画では、冒頭に「ゴール」が示される。典型的な例で言えば、犯人逮捕や恋愛成就など‥)
そんな不安がありながらもすぐにこの作品に入り込める。
それは、役者の演技や巧みな演出により、登場人物たちの心情や葛藤に共感できるから。
凄い才能の監督が現れた、と思ったら、この後、「黒い司法」の監督をやってるんですね。
ブリー・ラーソンはブレイク後もこの監督とのコラボは続けており、それは両者に強い信頼関係があるからだろう。
ラミマリックを活かしきってないのが残念
YOU ふっきっちゃいなよ。
かなり重たいテーマを扱ってるのに、見終わった気持ちはすごく爽やか。
ある種の無敵感というか、いつだって理想の自分になれるんだっていう希望というか。
最後に語られるマーカスのエピソードがすごくキラキラしてるし、
サミーが星条旗をマントにしてるのも微笑ましかった。
全体としては良くも悪くも主人公のグレイスに焦点を限定してるので、
それで見る人を選ぶ部分はあるかも。
でも過去のトラウマに囚われているひとにも、
今でっかい壁にぶち当たっているひとにも、
すごくポジティブなメッセージは伝わるんじゃないかと思う。
これまでの人生で自分がしてきた決断というか、選択してきたことというか
とにかく、なんやかんやあってもここまで生きてきた自分を褒めようぜっていう。
誰かと比べることなんて、マジで意味ないんだっていう。
同時期に見た「パターソン」を絶賛している人が多かったけど、
僕はこっちの方が断然すき。
何故生きているのかわからない大人たちと子どもたちのための映画
冒頭と終末にメイソンが話すエピソードが対照的で、この物語の入り口と出口のトーンをそれぞれに決定付けている。この構成だけでよくできたシナリオであると感じられた。
鑑賞する以前は、自傷行為とは、自己存在への疑問を痛みで実感するためのものであるとぼんやり思っていたが、グレイスが「流れ出す血を見ている間だけは辛い現実を忘れられた」と語っていたことからもわかるように、そんなに単純な行動ではないのだと自らの浅学を恥じた。
施設の中心的スタッフとして、子どもたちの自立を少しでも手助けしようと献身性を見せるグレイスとメイソンだが、実は彼ら自身が心に大きな傷を負ったり、それを誰かに救済してもらったりしながら成長していた。もうすぐ施設を出なければならないマーカスや、入所したはいいがなかなか心を開かないジェイデンとの関わりの中で、実はグレイスとメイソンが救われていた部分もあったように思う。
ラミ・マレック演じるネイトが新人スタッフとしての挨拶で「可哀想な子どもたちを助けるために」と失言してしまうのだが、「〜してあげる」意識でいるうちは、きっと誰とも心から関わり合うことはできないのだ。
何故ならあの施設にいる子どもたちは、自分がこの世界に欠かせない一人であることを実感したいからだ。だから、スタッフだろうが誰だろうが、自分を必要としてくれる相手に、実は最も信頼を寄せるのではないだろうか。
メイソンの冒頭エピソードはおかしくも悲しいオチだった。終末のマーカスのエピソードは微笑ましく希望に満ちていた。グレイスとの心の葛藤を乗り越えて、メイソンもまた、施設の子どもたちに救われたのだと思う。
同じような日常を繰り返す中に、ほんのわずかな絶望や希望、悲しみとおかしさを掬い取るような、優しい映画だった。宣伝チラシから、ダークでシュールなSFだと思って何年も観る気にならなかった自分が不思議でならない(笑)。
『癒し』は『信じること』に必ずしも発展しない
癒す人も傷ついている
問題を抱えたティーンエイジャーが暮らす(ショート・ターム21〉を舞台にしたドラマ。
親の虐待、肉親の死で心を病んだり、収容されている少年少女の事情も様々だが、彼らの世話をするスタッフもまた過去に問題を抱えていた。
若きケアマネージャーであるグレイスもまたその一人。
妊娠、かつての自分を思い出させる少女ジェイデンの入所で、彼女の心も不安定になる。
自分が経験者だからこそ寄り添えるというのも事実だが、彼らに対する度に過去の記憶が蘇り、傷口が開きそうになるのも確かだ。
この施設では基本的に入所期間は1年未満とされていて、スタッフが彼らに関わるのはほんの短い期間で、施設を出た後の彼らをずっと見守って行けるわけではない。
でも、その期間の中で精一杯寄り添い、なるべく前向きな姿勢で送り出す、きっとどこの国の同じような施設でもスタッフの思いは同じなんじゃないかと思う。
未だに虐待による心の傷を抱えているグレースに対し、同じスタッフで恋人でもあるメイソンは愛情溢れる里親に育てられ、危機に陥るグレイスを支える。
そのメイソンが冒頭で新人スタッフネイトに語る収容者の少年のエピソードとラストのマーカスのエピソードが対をなす円環構造になっている。
ブリー・ラーソンの出世作であり、今ではブリー・ラーソン、ラミ・マレックという二人のオスカー俳優を輩出したが、個人的にとても印象に残ったのは、18歳になり退所を控えたマーカスを演じたキース・スタンフィールドだ。
彼が母親への想いをラップのリリックで表現するシーン、髪を剃って母親から受けた暴力の跡がないか確かめるシーンには泣かされた。
彼は今作に出演後、『グローリー/明日への行進』『ストレイト・アウタ・コンプトン』『ゲット・アウト』等話題作に出演、確実にキャリアを伸ばしている。
打ち明けて、寄り添い合って、希望と未来を
偶然にもブリー・ラーソン主演作を続けて鑑賞。
こちらは『ルーム』でオスカーを受賞する前に注目を集めた2013年の作品。
問題を抱えるティーンエイジャーをケアするグループホーム“ショート・ターム12”。
そこで働くケアマネージャーのヒロインと、彼女を取り巻く同僚、少年少女たちとの人間模様。
心の傷を癒すハートフル作品にも出来るが、非常にシリアス。所々重く、生々しく、痛々しくもある。
精神疾患、自傷行為、DV…少年少女たちが各々抱える問題は、見ていて時に辛くなるほど。
ハリウッド映画でよく描かれるティーンエイジャーはお気楽能天気が多いが、無論全員がそうじゃない。
未来ある彼らをどうか、再出発させたい…。
しかしそれには、辛くもあるが、過去と向き合わせなければならない。
必ず彼らは、辛さをバネにし、乗り越える事が出来る…。
彼らをケアする側のヒロインも実はある問題を抱えている。
同僚の恋人の子を身籠り、中絶を考えている。…と、もう一つ。新しく入ってきた少女に昔の自分を重ね、打ち明ける…。
一人で抱え込んでいたら何も治らない。
話す事、打ち明ける事。
ここにはその問題を白い目で見る輩なんて居やしない。
寧ろ、手を差し伸べ、寄り添ってくれる。
同じ境遇の者が居たら、より親身になってくれる。
もう一人で苦しむ事は無いのだ。
実体験を基にした監督の演出と脚本は、心に傷を持つ者たちの触れ合いを、丁寧に掬い取っている。
ブリー・ラーソンが見事な演技。スーパーヒーロー役もいいが、本作や『ルーム』など、若手実力派と評価される高い演技力を存分に発揮。
キャスト面の注目に、ラミ・マレックの姿が。後の若きオスカー俳優が二人、今見るとお宝発見気分。
開幕シーンとラストシーンは似たようなシーン。
スタッフ同士で他愛ない話をしてると、突然少年が飛び出し、捕まえに走る。
でも、心情はまるで違う。
開幕シーンは大変な職場だと感じるが、ラストシーンは、一人一人と全力で向き合い、問題も乗り越え、希望と未来を感じさせる。
一筋縄ではいかない
何らかの事情で家庭で暮らせない子どもを保護する施設の話
職員は献身的に子どもを支えようとするけど、
その職員も陰では子どもと同じような悩みを抱えていて、みんなボロボロ。
それでも皆で寄り添いあって、一歩でも前に進もうとする。
わかりやすいハッピーエンドにはやっぱりならなくて、
そこがまたリアリティがあって重い。
こういう人達にこそ幸せになってほしい。
ブリーラーソンの代表作はルーム、最高作はショートターム
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