劇場公開日 2014年8月23日

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リヴァイアサン : 映画評論・批評

2014年8月19日更新

2014年8月23日よりシアター・イメージフォーラムほかにてロードショー

言語や習慣を超え、想像力に直に訴える海洋ドキュメンタリー

ハーマン・メルビルの「白鯨」に出てくる港町ニューベッドフォード。その伝説の港町から出航した、巨大な底引き網漁船で撮影されたドキュメンタリー。説明どころか一切会話すら出てこない。旧約聖書「ヨブ記」の抜粋のみ。

監督はハーバード大学感覚民族史学研究所に所属している2人の人類学者。GoProという防水機能付きの11台の超小型カメラを船内から甲板、帆先、網やロープに至るあらゆるところに固定し撮影。次々に揚げられ無造作に解体され内臓が飛び散る海洋生物、大量に流れだす血液や捨て去られる不必要な部分、荒れ狂う海、爆音とともに巻き上げられる底引きの巨大なクレーンモーター、そして船員の表情、入れ墨が施された皮膚を映し出す。

カモメの飛ぶ鳥瞰的な視点から虫瞰的な視点までカメラワークの範囲は、日常の人間の感覚とは相当かけ離れたものとなる。荒れ狂う大海と皮膚の下に脈打つ血液は連動し、その差異は消失する。

この映像は偽善的な社会派やヒューマニズム的な視点、閉じられた物語の体裁を取っていない。淡々と映し出される対象物や人間の活動、爆音やノイズから発せられる声なきメッセージ。それは言語や慣習を超えて我々に直接訴えてくる。

本来、職業として漁業を営んでいる漁師たちは、この映画に描かれている様なダークなファンタジーで海を見てはいない。日々思うのは事故やトラブルがなく安全に終了し陸に帰還すること。彼らは陸上での記憶や残してきた家族や恋人のことを思っているに違いない。彼らの心は「ここ」にはない。しかし、この映像作家ふたりにとっての関心事は「ここ」にしかない。

子どもは自由な想像力によって空き地を基地に変貌させたり、砂や小石を食物に変えることができる。しかし、大人は限定された状況でいかに遊ぶことが出来るのか。解放すること、見立てることを忘却してしまっていたのではないか。そう思わされる。この映画(船)には想像力を最大限にする極と最小限にする極と、対立する二極が乗り合わせているところが一番興味深い。

(ヴィヴィアン佐藤)

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