「人間ドラマはない 自由に楽しんで良い」センコロール コネクト JIさんの映画レビュー(感想・評価)
人間ドラマはない 自由に楽しんで良い
この物語はどこに向かっているのでしょうか。どこにも向かっていないように見えます。
新しいバケモノは素敵だったし、独特の雰囲気は健在でした。作画のアイディアも流石です。それだけで満足ですが、人間を描かないというスタイルが顕著に見えたのはちょっと予想外でした。
「センコロール1」から登場人物は増えました。しかし意外に、人間ドラマはありません。彼らの性格はみな異なっていて彩りはいいけど、夢や望み、悩みや憎しみなどはほぼ描かれませんでした。成長や、愛情や、心の変化とかもほぼないです。キャラクターに個性はありますが、互いに相手から影響を受けず、人間関係が最後まであまり豊かに展開しませんでした。だから、キャラクターのおもしろい顔を見つけることはあれど、感情移入はできません。
唯一、カナメは仕事がうまく行かないことに焦りと不満を感じているようだから、どうなるか注目しましたが、最後まで自分の欠点を克服することも昇華することも無かったです。
また、「センコロール1」は、センコがユキを好きになってコントロールをユキに渡すという話に見えたので、一見無表情なバケモノの心の動きを想像して楽しんだのですが、今回の「2」で、コントロールの受け渡しがセンコの意思ではなかったと明かされ、この辺もやはり心情性は薄れていました。
人物の関係に人間ドラマを生むポテンシャルはいくらでもあったはずです。なのに人間ドラマにしないのはやはり意図してのことなのでしょう。演出を失敗してこうなっているとは思えません。戦闘以外の場面を音楽で飾らないのとかも、たぶん意図あってのことでしょう。
そして以上は批判ではありません。人間がないということは、それ以外の要素、つまりきれいに作られたアニメーション、人物の表情やアクションや、バケモノ(ドローン)たちのデザインなどで楽しむことがメインになってくるわけですが、結局私はそれらを楽しむことができました。この感じは例えば、知らないサッカーチームの試合を眺めるときの心持ちに近いかもしれません。作品からの主張はなく、観ている側がある程度自由な視点で、表面的な魅力を選びとって楽しむことが許されていると思います。
テンポ、リズムに乱れがありますが、気だるい雰囲気のおかげかそんなに気にしないでいれました。意図的な乱れだったのかも。
アニメーションが好き、絵が動くのを見るのが好き、という人とか、こういう空漠とした雰囲気がピンポイントで好きという人には勧められるけど、そうでない人には気軽に教えたくはならない。その点だけ、ちょっともったいない気はします。広く大衆にウケるのは難しいかも。
とりあえず、続編は楽しみです。ドローンが何なのかもっと知りたいし、これから人間ドラマが描かれるとしても、それはそれでアリだと思っています。何年でも待ちます。