「.」オートマタ 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅にて鑑賞。ブルガリア・スペイン・カナダ・米合作。2044年、太陽嵐で人口が99.7%に激減し2,100万となり、ROC社はオートマタ"ピルグリム7000"を開発、あり得る世界観を視覚化した作り込まれたビジュアルに様々な言語が行き交うSEの中に時折日本語が流れるデストピアが舞台。人工知能の自我の目醒めと云う有り触れたテーマを物語の縦糸に、創造主と生命、死生観迄を描く黙示録。坊主頭のA.バンデラスに馴れる迄、少しかかった。ラストの着地点は定石だが、今年ここ迄観た中では文句無しのNo.1。80/100点。
・哲学的な講釈や命題が今以上に盛り込まれていたら、退屈していたかもしれないし、風景を含めた画面もアーティスティックに寄り過ぎず、エンターテインメントとしては良い按配だと思う。更に大きなどんでん返しや、ギミックめいた伏線がこれ以上に仕込まれていたら興醒めしていたかもしれない。そして何と云っても、本作のキモはやはりピルグリムだろう──ユニークな馴染み易いマスクを外したその外観を含め、たとえどんな仕打ちを受けようが、反撃・攻撃はおろか絶対人を傷付けてはいけないと云うプロトコルを遵守するその存在を、どう感じるかで本作の評価が分かれるのではないか。もう一つのプロトコルをあっさり不軌するのに、人命を守り尊重するのは順奉し続ける所に本作のテーマが隠されている。
・セクソロイド“クレオ”は、“Dr.デュプレ”を演じたM.グリフィスがノン・クレジットで声をあてた。彼女は実生活において、“ジャック・ヴォーカン”役のA.バンデラスの妻である。
・都市部のシーンは殆どCGで合成されたが、全てのロボット(オートマタ)は、リモコンを使ったアニマトロニクスにて撮影された。
・エンド・ロールの最後に合成音声にて流れる「デイジー・ベル」は、『2001年宇宙の旅('68)』に登場する人工知能"HAL9000"が初めて唄った歌である。これは『2001年宇宙の旅』の(共同)原作・脚本家であるA.C.クラークが、'62年ベル研究所にて"IBM704"が実際にこの曲を唄うシーンを見て衝撃を受けた為、同作に採り入れたと云われる。
・鑑賞日:2016年3月5日(土)