「ロシアの非道。」あの日の声を探して 孔明さんの映画レビュー(感想・評価)
ロシアの非道。
西暦2000年を目前とした1999年のチェチェンに「テロ掃討」の名目で侵攻したロシア軍。
直近のチェチェン独立派の起こしたテロ事件の報復とも言うべき軍事行動だった。
侵攻してきたロシア軍兵士にテロリストの疑いを掛けられて両親を銃殺された9歳の少年・ハジ。
普通の青年だったのに街中でいきなり逮捕・拘束されて兵士としてロシア軍に強制徴収されたコーリャ。
この二人は面識はないが、ダブル主人公としてそれぞれの物語の主人公として交互に登場します。
家の中に隠れてロシア軍の兵士をやり過ごしたハジは幼い弟を連れてあての無い旅へ出ることになる。
弟は途中で見知らぬ家の玄関に置き去りにして世話を天に任せた。
その後は難民の集まる施設に連れて来られたが、両親の殺害のショックでハジは言葉を話せなくなってしまっていた。
身元も事情も分からないハジを大人たちはどう扱っていいのか分からず戸惑う。
一方、皆殺しにされたと思われたハジの家族の中で姉は何とか生き延びることが出来ていた・・・。
そして、もう一人の主人公であるコーリャは友人と街中で話していたところを警察に逮捕されて強制的に兵士としてロシア軍に収容されてしまい、訓練を受けるようになる。
軍隊は上官からの暴行・同僚のはずの兵士たちからの嫌がらせ・虐めの行為によって最悪の環境となっており、コーリャの精神を徐々に蝕んでいくのだった。
ロシア軍の兵士たちはテロリストではなく、多くの無関係の民間人を殺戮しており、結局のところ多くの難民や家族を失う者たちを製造してそれが大きな傷となり、現地人に何世代もの恨みを残すことになってしまっていた。
兵士たちは決して生来の殺人鬼などではないのだが、常軌を逸したような環境に身を置かされたことで心身ともに病み、殺戮を平気で行う欠陥者を創り上げてしまう。
戦争で一番悲惨なのは「弱い立場」の女・子供・老人であると判る。
また、この作品では野良犬・野犬がやたらと登場して廃墟を彷徨っている姿が映し出されている。
逆に野良猫は全く登場しない。平和な日本では野良犬などまず見ないのだが、紛争地帯では餌を求めて彷徨う野犬は時に人間の死体も喰らったであろうことは想像に難くない。
そしてそんな犬たちも殺されて死体となって地面に転がっている。
人間の都合で「犬」たちも犠牲者になっているのだと知れる。
「ロシア」という国は特にだが、何かあるとすぐに軍事侵攻して一般市民を殺戮する印象がある。
21世紀になっても「そういう野蛮な民族」と考えれば全く信用の置けない人種だ。
