劇場公開日 2016年3月25日

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「キアヌがYeah..と言ったら.」砂上の法廷 ハルクマールさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5キアヌがYeah..と言ったら.

2024年1月16日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

鉄砲持ってドンパチ始まるんちゃうかなと思ったけど、終始静かな法廷サスペンスでした。

被告人は17歳、罪状は父殺し、凶器に指紋もべったり付着し自白もありと絶対的に不利な状況。弁護士のラムゼイはかつての上司が被害者であり被告人の父親、殺人現場にもいち早く駆けつけている、かなり特殊な状況での弁護を行うことになる。

さらに被告人の少年マイクは逮捕以降謎の黙秘を続けている。裁判が始まっても一切口を開かないマイクに対し、検察側は次々に証人を呼び事実を裏付けていく。肝心の被告人から何も聞かされず状況は不利になるばかり。そこに、補佐として人間嘘発見器の異名を持つ女性弁護士ジャネルが付くことになる。

ここまで法廷の証言では父親の高圧的な人柄や、親子関係の悪化がフィーチャーされていくが、その間に挟まれる実際の場面の映像では、証言と異なる部分もあり…。

法廷サスペンスの基本は、証言が正しいか正しくないか、法廷で語られるストーリーと真実はどこにギャップがあるのか、その小さなほころびを弁護士は見抜くことはできるのか、という流れが多いと思うけど、この映画は少し違っているところがポイント。

何しろキアヌ弁護士は証拠が揃っちゃっている状態で、肝心の被告人から何も聞かされていない状態で弁護をしなきゃいけない。自分からストーリーを作ることができない状態なので、アリ-フォアマンのボクシングの試合を引き合いにアリばりのRope a dope作戦を敢行していく。というかそれしか打つ手がない状態。相手(検察)がフォアマンの如く打ち疲れてくる隙はあるのか。

そして、マイクが法廷で初めて口を開く瞬間、今まで語られていたストーリーを大きく捻じ曲げるある事実が語られることになる。

ここから、想定していたことが全て突き崩されていく、検察側も、弁護側も。
しかし、物語はそうシンプルに結論に向かっていくわけではなく、単に隠し持っていたエンジンがいきなり動き始めただけ。ここからエンディングまで右に左に揺さぶりながら、どんどん加速していく。しかし、とても静かに。

落としどころとしては、意外だけど想定可能かな。事件の顛末はさておいて、法廷という場であったり、検察や弁護士の本音を比較的リアルに表現している気がする。そこで大事なものは一体何か、といったところ。

キャスティングはキアヌがドンパチしなくて不満、というわけではなく。そりゃ法廷モノでドンパチしないよね。でも、相棒のジャネルに対して渋い声で"Year..."と言った時には、懐に手を伸ばしてないか心配になりました。
あとは被告人の母親にレネー・ゼルウィガー、あちこちから狙われる役柄はちょっと厳しかったかなぁ。殺された父親にジェームズ・ベルーシ。ジョン・ベルーシの弟らしいけどお兄ちゃん要素全然感じんかったな。

比較的短い尺の法廷サスペンスなので、あー緻密だなぁと思うにはもう一歩の部分もあるけど、これはこれで十分楽しめる。結局法廷での宣誓なんて何の意味もないのね、と思わされる妙なリアルさがある作品だった。

ハルクマール
kossyさんのコメント
2024年1月16日

ハルクマールさん、共感&コメントありがとうございます!
レビューを読ませていただき、徐々に記憶が戻ってきました(汗
やっぱりアクションが無いとキアヌらしくありませんよね~

kossy