「病気なんだ、分かってあげなさい」妻への家路 shimoさんの映画レビュー(感想・評価)
病気なんだ、分かってあげなさい
クリックして本文を読む
映画「妻への家路」(チャン・イーモウ監督)から。
久しぶりに、切ない・・という感情が込み上げてきた。
「中国映画」だからという、特別な偏見ではなく、
「ハッピーエンドではない」結末に対して、
でも、これが現実・・というリアル感が私の胸を締め付けた。
娯楽要素の強い映画なら、最後には、正義は必ず勝つし、
辛い体験をしても、最後にはホッとさせられる結末が待っている。
しかし、この作品は、そんな私の甘い望みを打ち砕くように、
記憶障害で夫を他人だと思い込む妻は、最後まで治らず、
いつか妻の記憶が戻ることを信じて寄り添い続ける夫の愛情も、
最後の最後まで、変わらない。
この物語の起承転結が、私に「切ない」という言葉を吐かせた。
そんな母親の様子に、イライラを募らせている娘に対して、
父親はこう諭す。「病気なんだ、分かってあげなさい」
自分が、愛する妻に「夫と認識されていない」にも関わらず、
いつまでも、そばにいてあげたいと思う男心が、本当に切ない。
今まで、映画は「ハッピーエンド大好き」と言い放ってきたが、
たまには「リアル感」のある、こういった作品もいいな、と思う。
ハッピーエンドじゃないんだけど、心が温まるのは、
どんな環境になって、人が人としての尊厳を守っているから、
そう思わずにはいられない作品だった。
コメントする