「生きるよすがを求め、夜を彷徨う」シン・シティ 復讐の女神 REXさんの映画レビュー(感想・評価)
生きるよすがを求め、夜を彷徨う
フィルム・ノワール、古き良きハードボイルドの情感たっぷりでありながら、一つ一つのコマからコミック世界が飛び出してきた感覚も同時に味わえ、両方好きな者にとってはたまらなく贅沢な作品。
「か弱き女、情に弱い女、権力にあらがう男、惚れた女を忘れられない男、権力の権化」などなど、これぞハードボイルドというキャラクター達がこれでもかと登場。
特筆すべきはファム・ファタールのエヴァ・グリーン(役名もエヴァ)。
最近【300】を観たばかりだが、ここでも惜しみなくその裸体を露わにする。男を惑わす説得力たっぷりの見事なプロポーション。フランク・ミラーのお気に入りか。
キャストの変更があったのが少し悲しい。
殺人兵器ミホはデヴォン青木からジェイミー・チャンへ、ロアークはルトガー・ハウアーからパワーズ・ブースへ、ドワイトはクライブ・オーウェンからジョシュ・ブローリンへ。
特にミホはデヴォン青木の幼くツンと挑発するような面立ちがキャラにぴったりだったが、今回は美人すぎる(笑)。
またドワイトの変更により、前作のドワイト自身を思い出すのに時間がかかった。クライヴ・オーウェンが左右に女を従えた仁王立ちのカットがあまりに格好よかったから。
とはいえジョシュ・ブローリンもすこぶるいい。
彼の持つ無骨さが、心の底では優しさをもつ男にぴったりで、キスをされながら拳銃をぶっ放すシーンはもうね、観てて切ないやらほっとしたやら。
ジョニー演じたジョゼフ・ゴードン=レヴィットもいい。マーヴやドワイトがグレーなら、根っからの悪では無いピカピカの白。私怨ではあるのだが、真っ向から権力に立ち向かう男気を見せた。前作のハーディガンの代わりか。
ナンシー演じるジェシカ・アルバの、ストリッパーをだろうが飲んだくれようが、何をしていても穢されていない雰囲気を醸し出せるのも、個性でしょうね。いい配役です。
また、前作よりも暴力描写が直接的ではなく洗練された印象を受けた。血しぶきをシルエットにしたり、首切りのシーンを瞬間的に暗転したり。
他にもエヴァの目が妖しく光ったり、サングラスに光が反射したり、コミックらしい表現がハードボイルドに直結してグッド。
邦画のよくある漫画の映画化も、これくらい色々細工してほしいですね。一コマ一コマ本当に目が離せない。
ああ、でもやっぱりこれは愛の映画で、「もう騙されるな」と言い聞かせているのに騙されちゃうドワイトや、自分に振り向いてくれないドワイトを見捨てきれないゲイルや、昔の男に似ているから…といってチップをジョニーに渡すウエイトレス、ハーディガンの代わりにナンシーを見守るマーヴなど、みんな心に傷を負い、誰かを今でも想っていて、この町で生きるよすがを探しながら彷徨っている。
幽霊となったハーディガンがロアークの鏡に映り込んでナンシーを助けるシーンは最高のエンディング。
とにかくかっこいいに尽きる映画。