「天才数学者の悲劇」イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密 さとうきびさんの映画レビュー(感想・評価)
天才数学者の悲劇
サイモン・シンの「暗号解読」を読んでアラン・チューリングを知りました。
第二次世界大戦時に悪名(?)を馳せたドイツ軍の暗号機、エニグマを解いた天才数学者。けれど晩年は恵まれない境遇だったと簡潔に書かれていたました。
そのアラン・チューリングにスポットを当てた映画です。
彼のパブリックスクール時代、戦時中のブレッチリー・パーク時代、そして戦後のマンチェスター時代を交互に行き来しながら
おそらく今でいうアスペルガー症候群を抱えていた彼の半生を追います。
自分の感情を表現することも、他人の感情を汲み取ることも苦手な人物。
ドイツ軍の暗号解読機を解くという任務に従事しますが、コミュニケーション障害から作戦指揮官や同僚と衝突します。
彼には何をすべきかが見えているのに、周囲との軋轢でそれに取り組むことができずに苛立つ様に胸が痛みます。
やがて良き友人達の助けを得てようやく任務が軌道に乗り、「暗号解読」のユーレカ!
本作品で一番ワクワクする瞬間です。
けれど…時は戦時。
暗号解読はパズルではない、国家間の駆け引きであることが見えていた彼は苦渋の選択を迫られます。
この部分はサイモン・シンの著書では触れられていない部分でした。
そして戦後。
イギリスではなんと1967年迄同性愛が犯罪で、刑務所に入るか薬物治療(!)を受けるかの二択を迫られたとい史実に愕然としました。
知的なパズル、トロッコ問題的なジレンマ、同性愛者の社会問題など多様なテーマを一人の人間の苦悩として描き出した見ごたえのある作品でした。
チューリングが暗号解読機に付けた愛称は観るものの涙を誘います。
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