ビッグ・アイズのレビュー・感想・評価
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ティム・バートンの着眼
画像が終わりかけていたとき、僕は腑に落ちない感じが残った。
エイミー・アダムスとフルストフ・ワルツという当代きっての役者が挑んだ映画にしてはなにか割り切れない思いがあったのだ。
それは「ビッグ・アイズ」という大きな目をしたキャラクターがなぜ生まれたのか、という視点に、つまり、アートとしてどのようなことから、誕生したのかという点にほとんど触れていないことによっていると思う。そう、現象面だけを表しているような感じだったのだ。
でも、最後のタイトルバックが出ているときの音楽に目を見開かれた。いま、注目されている女性シンガーソングライター、ラナデルレイの歌が流れたときのことである。後で知るのだが「ビッグ・アイズ」と「アイ・フライ」という2曲の歌。
彼女の歌はアメリカの60年代、70年代の音と歌詞を現代風にアレンジしている。ちょっと聴いたら、耳に残る(60年、70年代の音楽を知らなくても)アメリカの全盛時のような、でもなにか満足できない時代を捉えている。それが現代の若者たちの耳にも共感を呼んでいるという。かくいう僕もその虚構の世界に片足はまっているのだが。
ティム・バートンは言っている「アートとはインパクトである」と。
ここからはかなり強引な僕の解釈だが、以下のような流れだったのではないか?
①ラナデルレイの歌を聴いた(鮮烈な印象を残す)
②この歌を生かした題材を探す(ビッグ・アイズ事件を知る)
③そのストーリーを知るそして作る。
ティム・バートンの作風はシュールというか、現実離れしたものが多いのが、この作品はそんなイメージはない。
アメリカにこんなことがあったのだという出来事をある意味淡々と描いたといえるだろう。ランデルレイの音楽に乗せることが大きな意味があったのだと思う。
普通に
絵とは何か
単なる抑圧された女性の開放を謳った話というだけではなく、多くの気づきを促している話で、面白かった。
夫、キーンは名誉欲と金銭欲に支配された邪悪な人間というだけでなく、憎めないところがある。彼は彼のようにしか生きられないのだろうな、という憐憫もあるけど、結局彼は決して自分がなれないであろう、芸術家というものに強くあこがれていた。
妻、マーガレットは純粋で真面目な芸術家というだけでなく、神秘思想や新興宗教にはまるという愚かな面も見せる。
夫と妻はそれぞれ異なる人間の弱さを持っていて、ある時期においてはお互いの強みを補完し合うよい関係だったともいえる。ほんの少し夫が妻を思いやれば、よい夫婦だったんだろう。
単なる対立ではなく、共依存的な関係が複雑に混ざる、このような対立は、現実的でリアリティがある。
絵の価値とは何か、ということについても考えさせる。妻だけでも、夫だけでも、ビッグアイズは世に出なかった。
絵の価値は、それそのものによって決まるのではない。バブルの頃の土地のような正体のないもの。だから、話題作りや、著名人の評価や、絵の背景にある物語が必要となる。それを夫はよく理解していた。
また、大衆が求めたのは、絵そのものではなく、流行りの絵を所有するという満足感だけだ、というのも面白い。
結局、絵というのはそれが生み出された文脈を切り離して評価することなど不可能ってことなんだけど、最近の日本で起きた作曲ゴーストライターの件ともつながるなあ、と思った。
埋もれていた真実。人間の愚かさと、それを見つめる純粋な瞳。
【賛否両論チェック】
賛:嘘や見栄といった人間の醜さが垣間見られ、改めて考えさせられる。最初は立場的に弱かった主人公が、娘を守るために自立していく様子にも勇気をもらえる。
否:実話とはいえ、終わり方には賛否両論ありそう。宗教的に意見が分かれる展開もあり。
女性の立場がまだまだ弱い時代にあって、夫に依存するしかなかったマーガレットの複雑な想いと、やがて自分をしっかりと持って自立していく様子が、とてもたくましく描かれています。そして、そんな嘘や見栄で塗り固められた大人達の世界を、間近で黙って見てきた娘のジェーンの姿もまた、人間の哀しさを訴えかけるようで、心に刺さります。後半のウォルターの変貌ぶりは目に余るものがありますが、これもまた人間の醜さを垣間見られるような気もします。
“本当の幸せとは・・・?”という問いかけを、絵画という具体的な表現方法を通して投げかける、そんな作品です。
とことんこすい詐欺男。
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