「まともな選択肢がない世界。」オマールの壁 だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
まともな選択肢がない世界。
分離壁はアラブ人の居住区を分断しているという事なのかな。
それとも、イスラエル側にオマールかナディアかどっちかがすんでるのかな。
意識的にパレスチナ・イスラエル関係は追うようにしているけど、
それでもよく分かってなくて。
日本人にはなじみの薄い題材だと
映画のHPなどに背景を説明してくれているものもあるので、
それを見るのですが、この映画は・・・HPが充実してない・・・
それが残念でした。映画本編には全く関係ないのですが。
まあ、そうなった事情もあると思いますが。
オマールがかっこよくてね、体も素敵でね、
全裸でつるされている後姿や、めくれたシャツからのぞくおなかに、
不適切な欲望をちらっと感じました。すいません。
前半では軽々と登れていたロープが、後半で2年ぶりに登ろうとしたら全然登れなくなっていて、
オマールは泣いてしまいます。時が、筋力を衰えさせたのです。
壁の向こうとの断絶した2年を思わせるいいシーンでした。
社会派的視点でも語ることが色々あり、
私などは無知でありますので、かしこブレーンに
解説して欲しい、ぜひとも!みたいな映画です。
でも、監督は青春物語として描いたとおっしゃっています(多分HPで見た)。
その切り口でも解説なしで十分堪能できました。
サスペンスでもあります。
はっきりと口にできないことが多すぎる文化の中で、
言えない本当のことを
自分だけの想像・知識で、補完して、
恋人を信じるには、彼らは若すぎた。
オマールもナディアもアムジャドも。
友人の言葉や、恋人が冷たくなった事に、ただ衝撃を受け、
怒り狂い身を引く前に、言質をとる知恵もない。
妊娠したのかとかね。聞けばわかったことなのに。
若く、幼いオマールが悲しかった。
真面目に働いた結婚資金をナディアのためにアムジャドに
譲るなんて、あたし絶対できない。やさしいね。
そして、アムジャドですよ。
ナディアを妊娠させた、という言葉は、
うそをついているようには見えなかったのですが、
その方面の知識が薄すぎて、知らんかったのかな。
それを見越して、だまされたんかな。
並んで歩いて、手にちょろっと触れただけ位のふれあいで、
ああ、もうナディアは妊娠しちゃったよ、
責任取らなきゃってラミに吹き込まれたのかな。
あるいは、妊娠させたってゆったら
オマールからナディアを奪えるとラミに言われたんかな。
そこまで悪知恵が働くようにも見えなかったけど。
あ、オマールの悪口をラミに吹き込まれて、
大切なナディアを悪い男から守って、自分の物に
するには、こうせよって教えられたんかな。
オマールが疎ましいという気持ちはあったでしょう。
だって、アムジャドはパッとしないけど、
オマールはすんごい美男子ですものね。せつないね。
ナディアも勉強頑張れとかゆわれてる位だから、
高校生くらい?だから、めっちゃコドモなわけですもんね。
だまってオマール信じて待っとけよと思いましたが、
無理な話ですよね。うん。
せつないな、悲しいなとおもいました。
そして、これがパレスチナでなければ、
怪我する必要のない、ありふれた恋の鞘当てじゃないですか。
そういう青春を味わえなかったことを思うと、
余計にやるせないな、と思いました。
ラストは、私はアムジャドを撃つための銃かなと思っていたんですよ。
でも、ラミだったんですね。そこが読めてなくて、え?え?って思いました。
アムジャドもナディアの兄もオマールも、イスラエルから見たら、テロリストです。
本人たちはどう自認していたのか、パレスチナの世間ではどうだったのか。
あと、オマールを石の上に立たせておちょくった(というかリンチした)
イスラエル兵の考えていた事ってなんなのか。なんであんな卑怯な事ができるのか。
いろんな気持ちになり、いろんなことを考える糸口を得た鑑賞となりました。
ゴッドファーザーの物真似は本家を知らんのでわかりませんでした。
隣の席の男性は、うれしそうにわらってたので、似てるんかも。